№1113 リーマンショックからの脱却 小売業
最近、私の顧問先会社がリーマンショックから回復しつつあるので紹介したい。前回は製造業の例を紹介したが、今回は小売業の例を紹介したい。
この会社はある商品の製造、卸をおこなっている。
生産は国内、中国の業者に発注し、商品は国内及びEU、ロシアで売られている。7年ほど前に新ブランドを手がけ社運をかけて資金を投入した。新ブランドに対しては当初3年ほどで3億円ほどになり急激に売上が伸び、会社の総売上の半分近くまで伸びていった。
もちろん、急激に売上が伸びたことの背景には大胆な投資がある。この間、借金も増加した。会社としては新ブランド対して会社の業態そのものを大胆に変えて自社ブランドによる自立を図ったのだ。
そんなおりに、リーマンショックが起こった。消費は急激に落ち込み、毎月のように売上が減少していった。負債はさらにふくらみわずか半年で借金の量は二倍に膨らみ、売上を超えるまでに至った。この時点で社長は倒産を覚悟した。
この会社の問題点は経理にあった。
新ブランドを手がける際に会計を独立させていなかった。そのため、新ブランドへの投資がどれほど役立っているか分からなくなっていった。新ブランドの売上が急激に伸びているため、今は損失だがやがて利益はあがると漠然と考えていた。ある意味、金は銀行にある今はいくらでも使えという間隔が社長にあったのだ。
しかし、会社倒産の危機にあって改めて売上を整理すると、新ブランドは常に膨大な損失をもたらしていたことが判明した。それは社長の想像を超えた損失レベルだった。これでは、リーマンショックなどなくとも会社は危機に陥っていたことが判明したのだ。
会社は急激なダウンサイズを行った。
従来の税理士は解任し、経営に踏み込める能力の高い税理士を採用した。部門別会計を確立させ、あふれ出ている在庫を整理し、新商品への投資も最適化が図られた。新ブランドについては確実に売れる筋を明確にし、売れれば必ず利益が上がる仕組みを作りあげていった。
銀行に対しては①金利の低い商品、②長期化して返済額が少なくて済む商品という基準で融資を選択した。複数の銀行と交渉し、支払低額化を不断に追求する方針がとられた。
最近になって業績が新ブランドが徐々に定着し、売上が向上し始めた。すでに売れれば必ず利益がでる仕組みはできあがっている。この会社ではもう少し様子を見て、5年後には借金を半額にする目標をかかげることにしている。