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№762 いきなり取引を断られた。

№762 いきなり取引を断られた。
 顧問先の会社からいきなり取引を打ち切られたという相談があった。
 この会社はガソリンスタンドを経営しているのだが、仕入れ先が倒産したために契約関係が終了し、もともとのガソリン会社大手との取引も中断することになったのだ。

 小売業では大手のメーカーや問屋などから商品を仕入れて売るということになるが、あたかも大手の営業所のようにして店を経営するようなことがある。そこでは大手の信用を利用して販売を行う。大手の商標を利用し、カードなどの決算システムも大手のシステムを利用することになる。

 取引を中止するということは、商品の仕入れができなくなるということだけではない。大手の商標を利用できないし、決算システムも利用できない。今日、カードの利用は小売りにとっては非常に重要なのだが、突然システムを利用できないでは商売にとって大きな打撃となる。

 今回の相談は、少なくとも次の準備ができるまで決算システムの利用を継続したいというものだ。

 もちろん、大手との取引などで約款上は抜かりはない。
 しかし、約款上不利な条件下にあっても、民法には「信義則」という大原則がある。いくら契約上不利であっても、余りにも不公平であれば「信義誠実の原則」によって修正が可能だ。

 この場合、継続的取引契約下での「期待」が保護されるかどうか問題となる。長年にわたって取引することが予定されている場合、それに向けて事業のあり方を双方とも作り上げている。そうした作り上げた状態は一定範囲で保護されるべきだと考えるのである。

 人の生活はそう簡単に変わらない。事業や生活の維持を考えた場合、簡単に変わらないことをお互い配慮するべきだ。継続的取引にあってはそうした配慮は「信義則上」法的保護に値する。

 本件の場合、1ヶ月ほどのシステム利用を求める仮処分(緊急措置)を求めることになるだろう。中小企業法務の場合、法的に困難な問題があっても「信義則」を用いることになるし、それでも限界があっても、粘り強く交渉を進めることを考える。

 仮処分手続きの中では相手方と協議する場が設けられる。「法的にはともかく」「ひどいじゃないか」ということで、しつこく食い下がることになる。我々はこうした交渉による解決を「寝技」と呼んでいる。