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№1976 不良社長の取り扱い

№1976 不良社長の取り扱い

こんなのが不良社長だ
 力量のない者が社長になった場合、どんどん社長が狂い出すことがある。
 狂い出すというのは会社の私物化だ。

 特に製造業関係だと大きなお金が動くが、実際には仕入れや外注先、従業員の給料に消えていく。粗利から固定経費を抜いていくと何億と売上げがあってもそれほど利益はあがらない。そこから返済金を引いていくと会社に残るお金は多くない。この利益は将来の景気変動、設備投資のためにとっておかなければならないお金でもある。

 ところが、
 大きなお金が動いていると、少しぐらい粉飾しても分からないだろうということで、私物化が始まる。一番多いのは帳簿上材料費や外注費を水増しして請求してもらい、自分の口座に入れていくという手法だ。中にはあやしげな経費でどんどんお金を出していくという単純な例もある。くだもの購入100万円という領収書を見たことがある。

 こうした不良社長が出た場合には早急な対応策が必要であることは言うまでも無い。

1. 不良社長のリスク
  ① 会社の財政状況が圧迫され、追加融資が必要になり、さらには資金ショートとなる。
  ② 取引先、銀行などに正確な決算報告書が出せなくなり、信用を失っていく。
  ③ 社内の風紀が乱れ、組織のやる気がそがれ、優秀な人材がやめていく。
  ④ 利益となるべきお金を、社長が経費として抜いていくため利益のごまかし、つまり脱税と見なされてしまう。

  このうち、①~③はじわじわやってくるが、④は突然やってくる。未申告分はもちろん、追徴課税の支払いがある。社長の不正が発覚し、税を免れるための偽装と認定されたりすると重加算税という恐ろしい制裁がある。これは突然やってきて、これで会社が一瞬にしてつぶれてしまうということもある。税務署 → 銀行の引き上げ → 取引先の停止 → 従業員の退職 と負の連鎖が続いていく。

2. 不良社長解任のシナリオ
  このように早急な対応が必要なのだが、シナリオ作りが難しい。
  不良社長解任の過程で不正が対外的にも明らかになっていくことを考慮しなければならない。できたらこそっとやるにこしたことはない。そうなると「不良社長リスクの緊急度が唯一の基準」となる。

  ① 「今すぐ社長をくびにしないと危ないか」
     または「今すぐ社長をくびにしても影響は少なくできるか」
  ② 「もう少し、時間をかけて社長をくびにできるか」
     または「もう少し、時間をかけて社長をくびにした方がリスクが少ないか」

  このときに、会社における悪影響要素を整理して、判断を組み立てていく。実際にはオーナーもしくは社内の重要な役員、弁護士、税理士、コンサルなど交えて会議を開き、不確定要素を特定した上で、幅のあるシナリオをつくり上げる。

  時がたつにつれて、不確定要素を徐々に確定させ、はばのあるシナリオの中から徐々に収れんさせていく作業を行って、可能な限りの軟着陸をめざすことになる。

3. 専門家の重要性
  こうした緊急事態となると、弁護士は必須の存在となる。
  全ては法的枠組みのなかで実施されるからだ。たとえば、不良社長が多数株主か、少数株主かで対応は全然違う。

  社長解任は取締役会決議によって行うのだが、その手続きは厳格にしておかないと訴訟になった場合に耐えられない。


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