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№716 「甘いにおい」で賠償

№716 「甘いにおい」で賠償
 お菓子の「甘いにおい」でも公害として訴えられる。京都地裁は、菓子メーカーに甘いにおいを理由に近隣住民に対する賠償請求を認めた(京都地裁H22.9.15 判時109頁)。

 製造業にとっては公害問題が経営上重大な問題となって立ちはだかることがある。私の知り合いには鍛造業のオッチャンがいるが、鍛造はとてつもなく大きな音と振動があるので公害問題ついてはそれそれは気をつかっている。毎年、1件1件まわって季節毎の挨拶を行ったり、近所の掃除をしたりしている。

 ある廃棄物業者は「地球環境」に強い問題意識をもって臨んでいる。得意先にも分別などを徹底するように働きかけたり、近所の掃除はもちろん、有機農業を始めたりしている。廃棄物処分場というと、時に「迷惑施設」などと言われてしまうが、このよう業者は地域の尊敬を受けながら事業展開を図っている。

 コンビナートのような大規模工場の場合と、中小企業の場合とでは同じ公害問題といってもかなり意味が違う。中小企業の場合、多くは相隣問題として処理される。つまり、隣同士、本来我慢しなければならないのであるが、あるレベルを超えると我慢の限度を超えてしまう。私たちはこれを「受忍限度」と読んでいる。

 企業のように事業として職業的に活動する場合には、個人に比べれば大規模だし、持続的だ。たとえば、お菓子の甘いにおいはどうだろう。隣の奥さんがお菓子を作れば、甘くよいにおいがやってくる。「おや、ケーキを作ってるな。」などと思うだろう。これを誰も迷惑だとは思わない。

 しかし、お菓子工場が毎日のようにバニラのにおいを出していたらどうだろう。毎日、毎日甘いにおいをかがされたのではたまったものではない。京都のある会社では、住宅地に工場を建設して、お菓子を製造した。ベビーカステラキャラメルコーン、焦げたバター臭などが出てきたのであるが、京都地裁は甘い臭いでも受忍限度を超えるとして、製造メーカーに賠償責任を認めた。