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№714 在庫一式の取り扱い

№714 在庫一式の取り扱い
 在庫一式、工場機械一式、担保に入れることはできるか。

 財産の集合体で、個々の財産の変動があるにもかかわらず全体として価値が維持される場合、「集合物」として取引されることがある。在庫などは典型例だ。在庫を担保に借り入れすることもできる。しかし、手続きがめんどうなので実際には余り使われいないが、役立つこともあるかもしれない。

 流動資産担保融資保証制度(ABL保証)→

 集合物については譲渡担保の目的になるかどうかは古くから争われてきた。譲渡担保というのは、簡単に言うと借金が払えなかったら所有権を移すという契約だ。本来所有権は一つ一つの物を単位としている。そのため、在庫一式を一つの「物」とみて扱うことはできないのが建前だ。

 しかし、それはかなり不便だ。在庫価値5000万円、これを担保に融資を得ようという時に、在庫商品いちいち目録を作成して担保を設定することはできない。在庫は流動するから、目録自体無駄だ(しかし、契約の時にはきちんと数え上げる。)。そこで、在庫全体を集合物とみて、あたかも一つの物として扱おうというのが集合物の考え方だ。その上で集合物を譲渡担保などの付して融資を得るということが行われる。

 尚、集合物を譲渡担保とすることができるかについては従来争いがあったができるという内容で判例は確立している(最三小S.62.11.10判タ662号67頁)。最近、この集合物情の譲渡担保について物上代位が認められる判例が出された(最一小決定H.22.12.2判タ1339号、52頁)。物上代位というのはちょっと難しいのでここでは省略する。

 集合物はそもそも個々の物の流動を前提としているため、所有者は担保に入れていても、個々の商品を処分することは許される。しかし、一方で商品全体はいつも一定の価値を持たなければならないため、集合物を担保に入れた所有者は常に一定の価値を保つ義務がある。そのため、譲渡担保契約には、借主は集合物の処分に応じて、同価値以上の商品を仕入れることが義務づけられる。