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№499 開発指導した研究機関の責任

№499 開発指導した研究機関の責任
 中小企業分野でも産学共同開発はとても大切だ。地方大学の研究者や、試験場など中小企業の社長がアイディアを出しては研究機関に持ち込み成果をあげている。
 
 しかし、研究者はあくまで研究レベルでの開発であって、実践レベルでの開発ではない。研究室でうまくいっても、実務的にうまくいくとは限らない。このあたりの見極めも重要だ。
 
 事案はつくば市の例だ(東京高裁h22.1.2判時2027号17頁)。
 つくば市では小型の風力発電装置を小中学校に設置することにし、合計2億9680万円の工事を発注した。この発電機は早稲田大学教授の発案によるもので、設置にあたってはこの教授と業者は事業に関する協議を続けていた。
 
 しかし、設置された機械は故障が多い上にほとんど発電しなかった。大学教授の作成した発電計画は到底実現できるものではなかったのだ。怒った、つくば市早稲田大学と事業者に2億9500万円の賠償請求を求めた。
 
 本件の風力発電装置は当初の計画とは異なるもので、能力も違っていた。本件では大学とつくば市は「小中学
風力発電導入基本計画策定調査業務委託契約」を締結しているのだから、専門家としてその違いをつくば市に説明するべきであった。この発電機の共同開発者である教授は機械の能力の違い説明するべきだった。
 
 判決文を読んでいると、この事業結果は惨憺たるものだ。これほどまでひどいと、裁判したくなる気持ちもよく分かる。もっとも、行政側も風が少なく、計画と実際とは異なることを知っていた節がある。大学の先生も、実際に発電するかについては無関心で、事業に予算が付けばあとは野となれ山となれという感もある。
 
 世の中の学者には無責任な連中もいる。大学の教授という肩書きを貸して、あとは何もしない連中だ。あるいは、科学的な誤りがあるにもかかわらず、権威によって隠してしまおう御用学者もいる。こういる連中とはいっしょには仕事はできない。