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№495 ばあさんの海外旅行

№495 ばあさんの海外旅行
 うちのばあさんはもう80才近くになるが、けっこうしつこい。
 最近、コペンハーゲンに行くと言っている。どうしてかというと、昔、行けなかったからだという。どれくらい昔というと、30年ぐらい前らしい。
 
 当時、北欧に行くということでパスポートまで準備したのだが、じいさんが病気になってしまって、流れてしまったらしい。そういえば、「北欧に行きたかった。」「じいさんのせいで行けなかった。」としょっちゅう言っていた。じいさんが死んでからも「おじいさんのせいで北欧行けなかった。」、「パスポートまでとったのに、」と恨まれている。
 
 コペンハーゲンは大変だ、体は持つかしらん。などと私と妹は心配している。もちろん,一人では行かせない。妹がいっしょについていくことになっている。それにしてもだ。体が持つかしら。
 
 ばあさんの話によれば、このまま生きていても生きているだけでつまらない、老い先どうせないのだから、コペンハーゲンで明日死のうが、コペンハーゲンに行かないで何年か先に死のうがたいして違いはないのだそうだ。そんなんだったら、コペンハーゲンに行って、死んだ方がましだというのだ。
 
 そんなものだろうか。
 
 ばあさんは、コペンハーゲンに成功したら、今度は中国に行くと言っている。中国桂林にはどうしても行きたかったそうだ。これも、積年の恨みがあるらしい。いつ死んでもいいから、行き着くとこまで行こうということらしい。それはそれで見上げた根性だ。