№494 中国契約法「不安の抗弁」
中国は社会主義体制であることから、日本の制度とは異なることが多い。日本では当たり前でも中国では違う。例えば日本では三権分立で司法は独立しているが、中国では全人代を頂点としてその下に最高人民法院(最高裁判所)がある。裁判官は最高人民法院の指示を受けたりして独立性がない。私たちの感覚からすれば、行政職のようだ。
中国は社会主義体制であることから、日本の制度とは異なることが多い。日本では当たり前でも中国では違う。例えば日本では三権分立で司法は独立しているが、中国では全人代を頂点としてその下に最高人民法院(最高裁判所)がある。裁判官は最高人民法院の指示を受けたりして独立性がない。私たちの感覚からすれば、行政職のようだ。
中国は改革・解放経済が進み、さらにはWTOにも加盟した。WTO加盟以来、資本主義諸国の法制度が急速に取り入られている。経済の自由を認めるためには私的自治、契約自由の原則、取引の安全など様々な制度が必要だ。約束が守られなければならないし、約束違反に対して強制力をもって統制される制度がなければ自由な経済は守れない。
契約分野では、1999年から2009年にかけて急速に整備されていった。
中国契約法の分野の裁判例などを見ていると、日本でもよく見るような紛争がけっこうある。相手に代理権があると信じたのに、実はなかったとか、強制執行される前に財産を処分してしまったとか、日本でも普通にある事件がある。
中国契約法の分野の裁判例などを見ていると、日本でもよく見るような紛争がけっこうある。相手に代理権があると信じたのに、実はなかったとか、強制執行される前に財産を処分してしまったとか、日本でも普通にある事件がある。
その中で、日本ではちょっと見ない制度に「不安の抗弁」という条文がある(中国契約法68条、69条)。売買契約などにおいて、先に履行しなければならない場合において、相手方に経済力に「不安」がある場合には、先履行を拒むことができるという権利だ。
事案は、天津泰友石炭業有限責任会社が杭州市華能址熱電工場に石炭を売却した事例だ。熱電工場は、数件の訴訟に敗訴していることや、判決の履行を拒んでいること、さらには石炭販売権を持たないにも関わらず、必要量を遙かに超えた石炭を購入しようとしたことなど財力に非常に問題があり、行動もおかしかった。そこで、石炭会社が「不安の抗弁」を主張して石炭の供給を中止したのである。
中国人民法院は、不安の抗弁を認めて、石炭供給を中止した石炭会社の主張を認めた。裁判の紹介を見ると、受取人を変更しようとしたりして、この熱電工場はかなり行動がおかしい。