ドラッカーが偉大なのは、経済、社会、組織、個人が発展するあり方を示そうとしている。私達はどんな組織を作りたいのか,どんな経営者でありたいのか,どんな社会に生きていきたいのか,ドラッカーは教えてくれる。
この「マネジメント」ではマネジメントの歴史が簡単に触れられている。その中で、ドラッカーはフランソワ・フーリエ、サン・シモンらの空想的社会主義、さらにはロバート・オーウェン(1771年5月14日 - 1858年11月17日)の実践をマネジメントの草分けとして高く評価している。
空想的社会主義は、啓蒙的な実業家によって労働者の生活の向上や社会の改善を目指そうとした点を捉えて、「空想的」と言われているようだ。社会の中には明確な階級対立があって、そのような搾取の実態を視ないで、理想を描いてもそれは、現実感のない「空想的」な改革に過ぎない。というのがマルクス主義者の考えていたことだろう。
しかし、「空想的」=「Utopian」はある夢を持ちつつ、組織や社会をマネジメントする考え方かもしれない。オーウェンは劣悪な環境下の置かれた当時の労働者を視て、「労働の生産性」という考え方に注目した。彼は、労働者の生活の向上と生産性の向上が相関していると信じた。理想が現実の組織を動かし、組織の成功が理想を実のあるものにしたということかもしれない。
オーウェンはニューラナーク工場で実業家として成功をおさめるのだが、労働者の生産性向上のための、組織のあり方、労働のあり方を検討した。彼が築き上げたニューラナークは美しい村として残されており、今では世界遺産にもなっている。
ドラッカーがどのような点に注目して、オーウェンを評価しているかは本では詳しく触れられていないので分からない。しかし、ドラッカーの言う、マネジメントが人のあり方、経営者としての社会的責任や理想、組織効率の向上といったテクノクラートとしての質の高さをも含んでいる。このドラッカーの考えからすれば、オーウェンの実践はドラッカーの理想の一つということになろう。
もっとも、ドラッカーの考えは労働者の立場には立っていない。マネジメント論からすれば、当然かもしれないが、彼は常に「エグゼクティブ」の視点でものを言うところがある。
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