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№424 「武訓と商知による創業」WEDGE より

№424 「武訓と商知による創業」WEDGE より
 ウェッジという雑誌があるが、新幹線に乗った折りには時々読む。何となくタカ派の傾向のある雑誌で、しっくりこないところもあるが、おもしろい記事もたくさんある。
 
 その中のひとつ。
「武訓と商知による創業」という記事がある(WEDGE 2010.2)。戦国時代が終わって、用なしになった武士たちが浪人となって、商売人になっていったことについて分析している。「浪人」というのはこのころ生まれた言葉らしい。筆者も言うように、浪の間の人というのは言い得て妙だ。

 さて、武家が浪人になって、商売を始めるに当たっては、武家時代の蓄財を資本とした。戦国時代が終わって、今度は商業が発達するのだから商売に対する需要も多い。このエッセイで言いたいことは、資本としたのは財産だけではない。知的蓄積も資本としたということだ。

 三井の源流、三井高房は「始末相続講式目」を作り、「銘々相心得べきは忠孝なり」と結論づけている。店と奉公人との関係は忠義で結びつけようとしている。確かに、軍事、行政組織である武家集団を支える組織原理は商売の組織にも応用できる。

 しかし、重要なのはそれだけではない。武士が行っていた知的作業が商売に応用されている点が重要だ。武士集団は実践で負ければ死んでしまう。知識が実際に役立つかどうかはきわめて重要というリアリスト集団だ。また,戦闘するのだから集団を厳しく統率しなければならない。こうした気風の中にあって、大きな集団を率いて、領国全体を経営するのだから、実は大きな商売に向いている。

 武家の商法と言うけれど、武家こそは学問を実践に応用する層であったり、文化を作り上げる層であったりする。権力によってお金をためたりする層でもある。武家の商法はそうした層の商法だ。

 武家の気風で本当の商法を身につければ商売は成功間違いなしだ。たとえば、消費者の動向に合わせて、ピンポイントで商品を提供して、流通も確保するというのは基礎的な学問があって生まれるようなアイディアではなかろうか。知的作業なしで商売はできないはずだ。さらに,鍛えられた集団性からアイディアを実践することも必要だ。物流を確保するためにロジスティックも組み立てられなければならない。
 
鴻池新六の文書ではこうなっている。
「万端正路を専らとし、王法国法を守り、仁義五常の道に背かず、主君大切、父母に孝行、家内睦まじく、謙り(へりくだり)驕らず(おごらず)、第一家職を励むこと」となにやら、武家の家訓のような家訓を残している。

この鴻池家の厳しさに、三井の「現金かけねなし」というピンポイントに消費者の要求に応えた商法を持ち込むと成功する訳ですね。