№287 交通事故事件
弁護士は医師ほど専門化していない。私の事務所で扱う事件は中小企業系事件ばかりではない。
交通事故,相続,離婚など一般的な事件も扱っている。
弁護士は交通事故事件を日常的に扱うが,実際にはかなり専門性があり,弁護士の能力に差がある。最も重要なのは被害者にとって誰が相手であるかをよく見極める作業だ。
交通事故の場合,加害者は保険会社の盾に隠れて出てこない。保険会社は直接会わないように指導する。そのため,被害者にとっては被害にあって,その保険会社の対応に悩まされるという二重の被害を受けることになる。
さらに,少なくない整形外科医が事故後の対応の煩わしさから,被害者の被害を軽く見ようとする傾向にあるため,被害者はますます窮地に追い込まれる。
つまり,被害者をとりまく不利益はさまざまな局面があり,こうした局面にあって誰を相手にしなければならないかという点を見抜くのがまず弁護士の役割だ。この点がわからない弁護士は被害者には頼りなく見えるし,真意をくみ取ってくれないと考える。
また,交通事故事例は医学的領域と重なることが多い。むちうち症が代表的な例であるが,高次脳機能障害,低髄液圧症候群,PTSD,RSDと様々ある。現在の保険会社の対応は,レントゲン写真,MRIなど画像所見中心主義で,画像上障害が発見できなければ,いくら患者が被害を訴えても被害と認めない。私の依頼者は全身麻痺で自力起きあがること難しい事例であるにもかかわらず,後遺症はないと判断された。裁判では非常に苦労して勝訴したが,実態はこんなものだ。こうした医学的領域と交錯する部分については弁護士によっては避けて通り,診断書がないからだめだとか,医師の協力がないからだめだとか適当なことを言って依頼者の訴えを煙に巻くことがある。
外にも,保険契約や,自賠責手続き,労災保険と問題となる部分はたくさんある。