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№239 現場重視 クロネコヤマト経営学

№239 現場重視 クロネコヤマト経営学
 クロネコヤマトの前社長小倉さんの「経営学」(日経BP社)は教えられることが多い。 まだ,読了していないが,教訓に溢れている。この本は社長の決断が過程が具体的に述べられていて,抽象的な教訓にはしていない。

 宅急便を開始するときの決断,運送を宅急便という「商品」と観念したこと。労災の克服する様子,サービス差別化の努力。社長がどのように決断していったかが書かれている。「経営学」を読むと,現場のよい点,悪い点が明確に整理されており,この社長がいかに現場と向かい合っていたかがよく分かる。読んでいて,何だか大企業の社長という気がしない。まるで,現場に通じた中小企業の社長のようだ。

 社長の決断という時の最初の教訓は,月並みだが現場に通じることだ。それまで特定の顧客を相手にした運送業が,家庭という不特定多数の顧客を相手にする事業を開始するに際して市場はあるのかを具体的に調査する。それは単純な統計的な資料ではない。一人一人の顧客が具体的に見えてくるまで市場を調査を行う。あるいは労災を無くすために現場の問題点を労働者の立場に立って調査し,社員一人一人が余裕を持って生活できるための問題点は何か,解決策は何かを調査する。「経営学」を読むとヤマト運輸の現場が見えてくる。

 社長の決断に必要なのは戦略的分析力だ。社長が現場を具体的に語れるかは中小企業では難しいことではない。しかし,問題を分析して語れるかは別のことだ。それは,解決しようという意欲があって現場を語ることができるかどいう分析力なのだろう。会社に対する理想像を頭に描き,その実現のための現場の分析だ。これには社長の人間に対する理解,会社に対する理解がはっきりと現れる。