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№221 松下ディスプレイ社事件の教訓 偽装請負

№221 松下ディスプレイ社事件の教訓 偽装請負
大阪高等裁判所平成19年(ネ)第1661号
平成20年4月25日第8民事部判決

 松下ディスプレイ社は松下電気のプラズマディスプレイパネルを製造していた。パスコ社は業務委託契約に基づき,松下ディスプレイ社内で社員を働かせていた。本件はパスコ社社員が違法な派遣労働であるとして松下ディスプレイ社との直接雇用を求めた事例である。

 労働者派遣契約に関する先駆的判例として有名である。これはいくつかの教訓がある。その一つが偽装請負である。
 松下ディスプレイ社とパスコは業務委託契約を締結し,見かけ上は松下ディスプレイ社の工場を借り受けて,松下ディスプレイ社の作業を行うという請負契約の形式をとっていた。

しかし,
① 設備の借り受け,パスコ社の事務所の実態がない。
② パスコ正社員ではなく松下ディスプレイ社の従業員の指揮命令,指示を受けて,同社従業員と混在して共同して作業に従事するなどしていた。
 実際,朝礼での松下電器の綱領,信条及び遵奉精神を唱和するとか,引継事項や報告事項を確認したりするとか,あるいは製造ラインの様々な作業を松下ディスプレイ社の社員と共同で行うとか,松下原告の労働の実態は松下ディスプレイ社の社員と全く変わらなかった。

 このような契約関係を,判例は「脱法的な労働者供給契約として,職業安定法44条及び中間搾取を禁じた労働基準法6条に違反し,強度の違法性を有し,公の秩序に反するものとして民法90条により無効というべきである。」として厳しく指弾した。