名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№217 コスト意識

№217 コスト意識
 私の法律事務所では月に2回,弁護士の会議を実施している。他の弁護士は勤務弁護士と言って雇われ人ということになるが,弁護士というのは不思議な職業で,若手弁護士でも経営者意識がある。最近は弁護士達も成長して「経営」を議論し始めている。

 そんな中で事務員の「コスト」の意味が議論になった。
 いま我が社は大きな事件を処理しなければならず,事務員は非常に忙しかった。

弁護士A
○○君に緊急の用を頼んだだけど,今,みんな非常に忙しいからタクシーで裁判所に行って,すぐに戻ってきて欲しいと指示してたんですけどね。彼は,せっかく裁判所に行ったのだからというので,いろいろ用を足して時間をかけて帰ってきたんです。

弁護士B
どこが,問題なのかしら。

弁護士A
本来は外回りのパートさんがいるから,その人にやって貰えばいい仕事を,ついでだからやるというのは問題じゃないかと思うだけどね。彼には今ある忙しい仕事をやるために,すぐにでも事務所に戻ってほしかったんですよ。パートさんに任せられる仕事はパートさんに任せて,自分の仕事に早く戻るべきだったと思うんです。

弁護士B
せっかく裁判所に行ったのだから,ついでの用を足していいじゃないの。

弁護士A
○○君は正社員でコストも高い,やるべき仕事がある。彼がパートさんの仕事をすれば,それは無駄になっている部分があるように思うんです。


確かに,コストというのは単なる出費ではなく,そのコストのかかる仕事がどれだけの利益や価値を生み出しているかという点からの考えがいるかもしれない。コストというのは無駄ではなく,価値を生み出す経費ととらえて,○○君の作業がどのような価値を生み出しているかを考えるというのは重要だと思う。

弁護士A
そうなんですよ。事務所が忙しい状態にあるじゃないですか。○○君には○○君しか生み出せない価値があると思うんですね。彼はすぐに戻って,彼の任務を全うするべきだったのではないかと思うのです。

弁護士B
私は,裁判所に行った,ついでにやってくるというのは,人情として理解できるし,コストパフォーマンスから言っても効率がいいように思うわ。

ということで,たわいもない会話だが,事務員各自が自分にかかるコストを自覚しているか,各自の行動に期待される価値を意識しているか,あるいはそれ期待以上の価値を生み出しているという自負もって仕事しているか,そういう雰囲気を弁護士達は作っているか,弁護士はうまく事務局を使いこなしているかなどが話題になった。こういうことは結論は出ず,議論することに価値がある。こうした問題は企業文化醸成の課題だからだ。

もちろん○○君がついでに仕事をしてきたことは良かったことだろうと思う。