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№164 劣後債権と自己資本率

中小企業法務 №164 劣後債権と自己資本

 自己資本率が銀行安全の基準であるという。国際的には自己資本率は8%であり,国内的には4%が基準だ。この自己資本率がクリアできれば,銀行は融資をしてくれるはずだ。確かに,何らかの自己資本率の向上,例えば公的援助などがあれば,自己資本率が向上して,融資の枠が増えていく。
 
 しかし実際には銀行はリスクの少ないところを選んで金融を実行する。例えば,大企業だ。中小企業がいくら頼んでも赤字企業には貸せないとかいろいろ言ってなかなか取り合ってくれない。本当に困っているところには貸さないで,困ってない企業には無理矢理貸していく。銀行というのは文字通り現金なところだ。

 この自己資本はかなり複雑でよく分からない。特に劣後債権がどうして資本的構成になるかしばらく分からなかった。債務なのに資本を構成するとういのは変だ。BIS規制でも資本構成しているものだから銀行でも劣後社債を発行している。

 ご存じの通り,旧商法は改正され,会社法となった。会社法の設計思想は定款の自治だ。定款で定めればいろいろなことができてしまう。株式でも,配当優先株式,議決権制限株式などといったものが登場した。議決権もなく配当だけがもらえるというのは,果たして株式と呼んでも良いものだろうかと思ってしまうが,できてしまったものはしかたがない。

 ともかく,お金は出資し,配当は貰える,議決は行使できないというと,お金は貸して,利息を受け取るのとほとんど変わらない。株主というのは企業が倒産するとお金を返して貰えない。そうなると,配当優先,議決権制限株式はもはや劣後債権とほとんど変わらないのだろう。それならば,劣後債務を資本と呼んでもよい訳だ。つまり,会社がつぶれたときには株主は投資金額を返して貰えない。劣後債務も一般債権者に劣後するという意味だから最後に返して貰うという点では株主と同じなのだ。

 こんなことを書いていると,弁護士のくせに知らなかったのかと言われるかもしれない。