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№3 渋沢栄一「真正の利殖法」

№3 渋沢栄一「真正の利殖法」

 私は時々,渋沢栄一の「論語と算盤」を読んでいる。渋沢栄一明治維新から大正初期までの間、様々な経済政策にかかわった偉人だ。彼は日本経済近代化にあって、道徳面を重視した。「論語と算盤」はそうした著書の一つだ。
 
経済では徳義は大切
 著書中の「真正の利殖法」では「真正の利殖は仁義道徳に基かなければ,決して永続するものでないと私は考える」と言っている。彼は孟子の「何ぞ必ずしも利を曰ん,又仁義あるのみ」「上下交々(こもごも)利を征(と)りて国危し」といった言葉を引用している。
 
利殖なくして経済は成り立たず国家は滅ぶ
 しかし,一方で「空理空論なる仁義というものは,国の元気を沮喪し,物の生産力を薄くし,遂にその極,国を滅亡する」といい,道徳と利益追求の「並び立って相異ならん程度において始めて国家は健全に発達し,個人はおのおのそのよろしきを得て富んで行くものになるのである」
 
経済秩序があって持続社会は実現する
 「真正の利殖法」では明治維新の近代化にあって経済秩序の重要性を説いている。「例えば鉄道の改札場を通ろうと言うに,狭い場所を己れさえ先に通ろうと皆思ったならば,誰も通ることができぬありさまになって,共に困難に陥る」というような例を引き合いに出している。
 
 渋沢は近代国家は秩序無くしてたち行かないと行っている。この徳義と利殖の調和は今では「持続性」という言葉で表現されることがある。法律方面では健全な競争社会を実現するために独占禁止法不正競争防止法といった経済法が整備されている。
 
 昨今ではどん欲なグローバリゼーションが「真正の利殖」を失い,秩序を失い、まるで経済戦争のようになっている。貧困の固定化による社会不安はさらに加速するかもしれない。
 
国家百年の大計と渋沢の気概
 渋沢栄一は徳義を重んじ利殖を通じて国家に貢献することを旨としているが,その文章の端々には国家百年の大計を作り上げるという高い理想と強い意気込みが感じられ,読む者は鼓舞される。
 
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