№1009 勢とは、利に因りて権を制するなり
孫子は小手先の戦術では戦争は勝てない。国家の基本理念を確かにして周到な準備が整えば、勝利を得ることができるというのである。
「計、利として以て聴かるれば、すなわち之が勢を為して、以てその外を佐すく(たすく)」
つまり、確かな戦略に手応えを感じて採用することになれば、国力が充実して、これが「勢」をなして、国外の兵を助けることになる。ものごとの勢いは、さまざまな偶然に支配されるものであるが、結局のところ、確かな戦略に基づく国家運営の成功にかかっている。
「勢とは、利に因りて権を制するものなり」
この場合の「勢」とは、勝利に向かって大きな転機を得る場面を言っている。つまり、孫子は五事七計の大計を国家に当てはめて国家運営を充実させ、「利」を獲得する。その利はなんらかの転機によって、勢いを勝ち取り、「権」勝敗を決することになる。
「利」という体制の充実、「勢」という成功に向けての転機。この組織の体制とその充実が現実を動かす力となって現れる醍醐味を、孫子は「勢」と呼んだのだと思う。