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№116 カルテル

中小企業法務 №116 カルテル
 独占禁止法の条文は簡単だ。カルテルを禁止する法3条は「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」と書いてあるだけだ。「取引制限」の中にカルテルが入っている。カルテルというのはドイツ語なのだそうだ。一般的には競争者間の競争回避のための取り決めということだろう。価格カルテル,数量カルテル,設備投資カルテル,市場分割カルテルといろいろ分類されている。

 カルテルは禁止されている。教科書的には,①複数の事業者が,②共同して,③相互に事業活動を拘束することにより,④一定の取引分野における競争を実質的に制限すれば,不等な取引として禁止されることになる。しかし,これだけではさっぱり分からない。独禁法の分野は,問題となっている企業の規模,対象となっている取引の特殊性,競争制限の効果,商慣習など,複雑な要素が絡み合い,単純な割り切りは難しい。

 カルテルは中小企業であっても問題となりうるが,私の関心事は市場参入の制約を独禁法を利用して打ち破れないかという点にある。中小企業の役割は起業により社会に創造性を与える点にある。そのためには直接市場に認められたり,あるいは大企業を通じて間接的に市場に認められたりすることはきわめて重要だ。

 よいアイディアがあり,実際によい製品があっても市場参入できないでいることがある。その打開手段としての独禁法の研究が必要だと思うのだ。例えば,地ビールだ。地ビールが地方ごとの個性を反映する商品として流通するときに既存の商品の流れが参入を疎外していないだろうか。その場合,法律によって参入の穴を作ることができないだろうか。といったようなことである。

 もちろん,話は簡単ではない。重要なのは法律を使うと言うときに,何も裁判だけが使うということではない。それはある種の説得の材料として利用することも可能なのだ。中小企業の新規市場参入の阻害要因を排除するために企業家が一丸となって政府や,公取に働きかける際の「正義」を提供することも法律の活用であり,そこにも弁護士の役割がある。