中小企業研究 №111 中小企業の地域貢献
中小企業家同友会ではまちづくりに対する中小企業家の役割が議論されている。
ここでは中小企業家が地域に果たす役割,逆に,地域貢献が経営に与えるメリットが論議されている。中小企業は地域に根ざすことによって持続的な発展が約束されるという考え方に基づいている。
中小企業は規模が小さい分,活動範囲が限定される。地域経済の発展なくして中小企業の存在はあり得ない。中小企業無くして地域経済の発展はあり得ない。中小企業は地域の人々の生活を多様化させ,豊かにするであろうし,雇用などを通じて地域経済を支えていく。
こうした理念は単純でわかりやすいのであるが,実際の政策となると難しい。それは中小企業が多様で,地域貢献と言っても貢献の仕方が大きく異なるからだ。私の考えでは問題点は次の点だろう。
① 中小企業の規模や事業内容が多様であり,同一に論じていること。
例えば,小売りと製造業とは異なる。同じ小売りでも店舗をかまえる場合と,配達なども含めて幅広く販売する場合と異なる。
② 中小企業の多様性のあり方に応じた具体的な貢献が整理されていないこと。
商店街などは地域貢献はわかりやすい。小売り関係は直接市民を相手にするのであるからわかりやすい。しかし,製造業,運送業などの貢献は何だろうか。顧客が大企業である場合には地域貢献はどうだろうか。
③ 雇用による地域貢献のあり方が明確ではないこと。
これは単純に,雇用があるから地域貢献としているところがある。地域貢献することで,地域文化にどのように影響を与えるか,あるいは,地域貢献することでどのように良質の労働者を獲得できるかなどについて議論が足りないように思われる。
④ 地域の経済構造,経済規模の違いが意識されていないこと。
名古屋市のような工業が発達した大規模な都市と,瀬戸市とは違う。人の顔が見えないような大きな都市と,人の顔が見えそうな小さな都市とは違う。
⑤ グローバリゼーションについての意識が明確でないこと。
今日,中小企業は世界とライバルと戦わなければならない。それが空洞化を招いたり,逆に,中小企業の発展にも結びついている。このグローバリゼーションの功罪と中小企業がまちづくりに果たす役割は無視できない。
⑥ 大企業との関係を明確にすること。
世の中は中小企業だけで動いているわけではない。むしろ,大企業の経済力が圧倒している。大企業が地域経済主義をとるシステムとるためには中小企業が中心的役割を果たすことになるだろう。
⑦ 行政との関係を明確にすること。
現在の中小企業政策は中小企業の主体性を重視し,行政の役割は主体性を発揮させるという補完的役割である。ここでの意識が欠ける場合がある。
⑧ 白書や、研究論文についての到達点が意識されていないこと。