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№83 自己株式(金庫株)

自己株式といのは「株式会社が有する自己の株式」と定義されている。

 会社のオーナーは株主だから,会社が自分で自分の所有者となるのは変だ。会社の買取は,結局,出資したお金を返すと言っているのと同じで,会社の財産を減らしてしまう。それでは他の株主にとっておもしろくない。会社の債権者にとっても会社の財産が減ってしまうことは会社の信用が失われることだから大変だ。

 というので,会社法では従来から自己株式を原則として禁止していた。しかし,一連の会社法は自己株式をかなり自由に認めるようになった。「金庫株」の解禁と呼ばれるものである。会社が自社株を取得し,ずっと保管する,これが金庫株である。

 会社に財産はあっても個人には少ないという会社がある。しかし,会社の存続から言って個人にお金を与えなければならないときがある。例えば相続だ。会社の株を事業承継者が取得すると,他の相続人に代償金を支払わなければならないときがある。株を貰っても,現金を貰うわけではないからそのお金がない。そんなときには会社に株を売って,そのお金を代償金とすること可能となる。あるいは,相続税がべらぼうに高いという時にも使えるかもしれない。会社の金庫にある自社株を利用して退職金のかわりとするということもあり得るし,新株発行しなくてもよいので,共同事業のパートナーに株を与えるときに便利かもしれない。

 このように,自己株式は応用範囲は広い。しかし,いくつか規制もあるので注意を要する。
 ① 株主総会が必要である。特定の株主からの取得では特別決議が必要である。
 ② 剰余金の分配可能額規制,業務執行者の損失補填義務がある。