名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№65 ウサギが法廷に来た日(駄文で失礼) その3

 先週はワシントンDCに出張していて,中小企業法務を勉強する暇がありませんでした。駄文で失礼。ウサギ,その3です。

 ウサギの事件はエピソードに事欠かない。東北地方のあるハンコ屋さんは,ウサギが法廷に行くにはハンコが必要だろうというので,わざわざアマミノクロウサギというハンコを作ってくれた。その発送方法がふるっている。封筒の表には,「鹿児島県奄美大島 アマミノクロウサギ 様」としか書かなかったのだ。しかし,既にウサギの裁判は大評判になっていたから,郵便局も誰に宛てたかちゃんと分かっていて,運動のリーダーのところに届けてくれた。

 実はこの事件,私たち弁護団はメディアワークをいかにするかをいろいろ考えたのだ。ウサギ原告となれば世間の注目を浴びるのは目に見えている。もちろん,あれほど大騒ぎになるとは思わなかったが。しかし、目立てばよいというものではない。多くの人はメディアワークを誤解している。メディアは良心を持っていて,目立った奥に何かキラリと光るものがあることを分かってもらわなければ後が続かない。

 私達は,実際には「自然の権利」という考えを主張した。訴状では人とは何か,自然とは何か,人は動物を滅ぼして良いのかという根本問題を提起した。私達はこれを哲学的事件として位置づけ,当時,世界最高の水準の議論を展開したのだ(これは本当に世界レベルの議論です。ウソではありません。)。私達の祖先はかつては自然を恐れ,楽しみ,敬い,自然とつきあう作法を心得ていた。現代人はそれを忘れてしまった。この裁判は私達が忘れてしまった,やさしさ,豊かさ,自然とつきあう作法を現代に取り入れる裁判である,と私達は裁判で主張し,メディアはそれに共感してくれたのだ。

 裁判は負けたが,裁判所は自然政策のあり方を変えるよう世間に訴えた。開発は止まり,私達は実質的に勝利した。アマミノクロウサギ万歳!(終わり)