名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№48 ある離婚話(細かいことを言う男は離婚される)

 弁護士をやっているといろいろな事件に出会う。離婚事件など日常的に取り扱っている。その中で,ときどき名古屋のならではではないかと思われる離婚事件がある。それは,夫が家計を握り,夫が妻に対してやたらと細かく節約を言ってくる事例だ。
 細かい男はどこにでもいる。しかし,この場合,トヨタ方式を彷彿とさせる細かさがにじみ出ている点で他の地域と違う。妻がこんな少ない生活費ではやれませんなどと苦情をいうと,最初から無理だときめつけるのがおかしいと家庭内で反論する。どこがどう生活費をやりくりするか問題点を考えろと妻に言う。問題点を明らかにしたらそれを改善しなければ前進はないと夫は妻に言う。あげくの果てには妻は無能だと決めつける。あるいは浪費家だと決めつける。
 こうした妻たちの相談を聞いていると,夫たちが日頃からどんな風に仕事をしているか見えてくるから不思議だ。骨の髄まで「カイゼン」に犯されてしまったに違いないと思う。生活費など細かく考えていたらきりがない。それでなくとも主婦は1円でも安い商品をもとめてスーパーをさまよっているのだ。人は全てのことを細かく点検して生きているわけではない。ある程度アバウトな部分がなければやっていけない。それが余裕というものだ。この当たりはラインをぎりぎりまで削り取っていくような工場の現場とは異なる。
 そして,もっとも大切なものは,こうした女性が必ずいう言葉だ。「自分は何もしていないくせに,やたらと私や子供たちには細かい」。そうなのだ,形ばかりのトヨタ方式を身につけ,実行しようとしている連中に限って,自分かってに難しことをやっていると思いこみ,人心を失ってしまうのだ。相手の立場を考え,自分の立場を考え,自分が所属している団体の性質を考え,そうしてトヨタ方式を応用しなければ生きた体験とは言えない。