まんてんプロジェクトは誇り高い中小企業の集まりである。
神奈川県，東京都の中小企業が国内航空・宇宙分野の部品などを調達することを目的に2003年9月にまんてんプロジェクトが発足した。異種業種が共同することで新たな分野を開拓しようと言う意欲的な試みだ。まんてんプロジェクトの「中小企業の得意技術を生かし、品質保証の厳しい航空・宇宙部品開発製造分野に進出し、国際競争力のあるワンランク上のものつくりを目指す」という目的を達成するため，参加企業の品質保証を実現するためにJASPA株式会社を設立した。この事業は社会的にも注目され，メディアにも多く登場している。
山崎淳氏はこのまんてんプロジェクトについてオーラル・ヒストリーという民俗学が使用している手法によって分析を行っている。これは，参加者の生の言葉を分析することによって，現象の「臨場感・迫真性・直接性」確保し，現象分析に対する複眼的見方を可能にするというのである。この手法からみたまんてんプロジェクトは本当におもしろい。中小企業者ならではの雑草のようなたくましさの中に花のような「夢」が伝わってくる。
「だからね，私，ここまできたのは，さっきもいったようにね，2軒長屋からね，おかげさまで，ちっちゃなビルもこうやってもたせてくれたということは，やっぱり，なんていくかな，それだけ，皆さんの力があったことなんだから，私はこれからお返しだと思ってんの」
「いろんなルートがたまたまこう，一時期にわーと，あるんですね，時代の流れの中で。今回のまんてんプロ，JASPAつくるときもそうなんですけど，全ての条件がわーと，こう，エネルギーが高まって，で自然にその中に組み込まれていく時期があるんですが」
山崎氏はこうした参加者の言葉を使ってまんてんプロジェクトを説明し，「最後に大企業を頂点とするピラミッド構造の中である下請けという『意識』」があるものの，中小企業としての誇りや自律性を求めて「単独では成し遂げられないことの挑戦である」ことの意識の存在を明らかにしている。私はこうした意識の存在こそ中小企業発展の鍵であるし，経済民主主義実現の鍵であると思うし，そうした意識を応援するのが弁護士の役割であると思う。
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