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№39 赤福事件の教訓 その2(廃棄物問題)

 ゴミであるものがある時突然商品になって,形式的処理だけで多額の利益がもたらされた。このような魔法のような利益があるときにはコンプライアンスからみて要注意である。
 中日新聞のウェブサイトによると,赤福事件の概要は、①売れ残り製品をラベルをまき直して消費期限を変えて再度売却,②もち,あんを菓子の原料として再度利用,③肥料として売却の3つの処理があり,そのうち①が農水省三重県に取り上げられたことになる。原料として利用した分については新聞では問題であるかのように報道されたが,実際にどの程度行政指導が入ったかは不明である。
 売れ残り商品を捨てるとなると廃棄物となる。多くの食品がまだ食べられるのに捨ててしまうのは「もったいない」ということになるだろう。企業経営の立場から言っても,捨てればゴミとして処理費用が新たな経費として必要となるし,売れれば商品ということで逆に収入となる。この差は大きい。昨今のように廃棄物処理に多額の費用がかかる時代にあってはゴミは少なくしたいというのが事業者の本音だろう。社会的にも「もったいない」ことを止めるというのは支持されている。
 こうした事情から企業コンプライアンスにあっては廃棄物が問題になることが多い。廃棄物で有名な事件は「おから事件」がある。豆腐製造の残渣であるおからを「商品」として売却した事件である。これは商品としての売却という形式をとっているが,実際には処理業者に費用を払っていた。これを私達は「逆有償」という言葉で表現している。業者は廃棄物処理法違反で告発され,裁判所は「逆有償」である以上廃棄物であるとして業者を有罪とした(最判H.11.3.10)。これは廃棄物を名前で判断するのではなく,実質的に判断した事例として有名である。
 ゴミであるものがある時突然商品になって,形式的処理だけで多額の利益がもたらされた。このような魔法のような利益があるときにはコンプライアンスからみて要注意である。