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№29 EUにおける「日本的経営」

 三井逸友先生の本によると、1982年ショーン・バーガーの「日本の製造技法:単純化における9つの隠れた教訓」という本がEU・米国でベストセラーになったそうだ。当時日本経済、日本企業に対する関心は急速に高まり、日本における大企業と中小企業との関係も注目されたのである。当時、EUは統合向けて加速し、新しい経済体制を模索していたのであるが、大企業と中小企業との関係についても統合された市場にふさわしい関係が必要とされていたのである。
 日本の1970年代は1973年のオイルショックを契機に大不況となり中小企業経営は困難を極めた。そうした中で実力ある中小企業は生き残り、中小企業自体も実力を蓄えるようになった。当時の日本は産業構造の変革を余儀なくされ、中小企業に対しても大企業にない積極的役割が期待されるようになったのである。こうした時代を背景に1980年代に入ると中小企業はニューフロンティアを開拓する存在として注目されたのである。これは日本ばかりでなくこうした中小企業に対する見方は国際的なものと思われる。
 さて、話をEUの話に戻すが、EUでは「日本的経営」における大企業と中小企業との関係を協力発展関係として捉えて研究の対象としたようである。下請け企業はサプライヤーネットワークとして考え、こうした企業群の中で中小企業は技術革新、生産自動化を実現し発展すると考えていたようだ。これは実力ある中小企業が創造性を発揮し世界の経済に影響力を与えるという1980年代の中小企業観も背景にあるだろう。
 日本では経済の二重構造があって、中小企業は系列化されてきた。中小企業は過当に競争し、大企業は優位な地位を背景に多くの要求を中小企業にしてきたのではないか。もっとも、大企業と中小企業との力の差は欧米でも同じだろう。中小企業は大企業の一部を担い(subcontract)、大企業に依存する経済も存在するのだろう。そうなると日本と欧米との違いはどこにあるだろうか。日本の中小企業は自由度が必ずしも高くなく、独占禁止法も下請代金法も必ずしも機能していない。欧米は違うのだろうか。私は日本と欧米の中小企業における従属性は違うか、欧米の中小企業ははめぐまれた地位を持っているかどうか知りたいと思う。