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№23 突然の取引拒絶

 事業が継続している以上特定の企業と継続的な取引をしている例は多い。材料や商品を継続的に仕入れたり,あるいは商品を継続的に納入したりしている。商品の仕入れ,あるいは納入について一社に依存することは,依存先が何らかの理由で突然取引できなくなったら会社はつぶれてしまう可能性がある。そうでなくとも,特定の会社に製品を供給するために設備を整えていれば,取引停止によって設備投資が無駄になってしまう。社長としてはこうした依存関係ついて,普通は危険を感じているはずだ。いざというときの危機管理について社長としては対応策を考えておかなければならない。
 相手が大企業はこうした依存関係から足下をみて交渉してくる者も少なくない。大企業担当者は「要求に応じないとなると,上層部はお宅との取引を中止することも検討するかもしれませんよ」などと言って脅かしてくる。どうも,ものわかりが悪く,交渉力のない担当者ほど脅しに頼った交渉をしてくるらしい。しかし,社長としてはその程度のことでひるむわけにはいかない。相手が本気で取引停止を検討しながらものを言っているか値踏みしながら強気の交渉を進めていくことになるのだろう。社長というのはそうした強い意志が必要だ。
 ところで,実際に取引が拒絶されたどうなるだろうか。例えば,キヨスクが何かの理由で店頭に商品を置いてくれなくなったとしたらお弁当屋さんやお菓子屋さんは大いに困るだろう。あるいは,液晶部品を生産しているが今後は取引しないなどと言われたらどうだろうか。判例上,継続的取引を前提に取引関係がある場合,突然の取引拒絶は正当事由が必要だ。「契約の存在を前提として製品の販売のための人的・物的な投資をしているときには、その者の投資等を保護するため契約の継続性が要請されるから、公平の原則ないし信義誠実の原則に照らして、製品を供給する者の契約の更新拒絶について一定の制限を加え、継続的契約を期間満了によって解消させることについて合理的な理由を必要とすると解すべき場合がある」としている。取引拒絶に対しては商品の購入義務などが生じることになる。しかし,永遠にできるという訳ではなく,こちらが取引拒絶に対応するための準備期間が認められるに過ぎない。この辺りは自由競争を前提とすると止む得ないと言えよう。