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№11 中小企業家同友会設立前夜

 1957年4月26日,日本中小企業家同友会が設立された。これはその後の12年間の運動と準備を経て,中小企業家同友会に発展していく。中小企業家同友会が設立するまで歴史は日本の経済発展のあり方を大きく決める時期であった。
 1957年中小企業白書は日本経済を二重構造と評価し,経済的にも社会的にも劣位に立つ中小企業発展が課題であるとした。確かに当時の中小企業では大企業に比較して著しい低賃金にあり,労働基本権の確立もままならなかった。技術的にも現在とは比べものにならないほど未熟であり,中小企業発展は焦眉の課題であっと思われる。
 問題は発展の方向が何であるかということである。高度経済成長を目前としたこの時代は大企業は中小企業の系列下を急いでいた。そのため中小企業に求められたのは大企業の要求に耐えられるだけの技術水準であった。求められるのは中小企業政策は重化学工業を中心とした産業構造に必要は中小企業の発展であり,中小企業が独自の立場で自由に事業を展開する政策ではなかった。中小企業は中小企業団体法のもと,官僚的な統制下に置かれようとし,中小企業政治連盟という単一の組織によって政治的影響力を行使することが期待された。一方で大企業のカルテルは進められたのである。つまり,1957年当時,政府の方針は中小企業も含めた大企業を中心とした官僚的統制と言うのが顕著な傾向だったのである。
 そん中,1957年,中小企業家同友会の前身である日本中小企業家同友会が設立されたのである。国の力を背景に統制に入りつつある当時の社会・経済状況にあってわずか70名が立ち上がったのであるが,この70名の勇気と英知にはとうていかなわない。少数の中にあっても自主性を貫く,その先見性に敬意をもって臨まずにはいられない。
日本中小企業家同友会設立趣意書には「我等の会は中小企業家の,中小企業家による,中小企業家のためのものであることを宣言する。」とあり,自由の気概に溢れている。