名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№8 中小企業家にとって自由とは何か

 中小企業の特徴は規模が小さいため社長の個性が事業活動に色濃く反映する点にある。実際の法律業務では会社の相談というよりは社長との相談といったほうが適切な場合が多い。中小企業音場合,企業経営そのものが社長個人の自己実現の過程と言ってよい。もちろん,企業は一人では成り立たない。中小企業のよいところは,社員もまた経営に参画する点である。大企業であれば末端の歯車のような存在も中小企業であれば経営に直接参画することも少なくない。社長と社員との距離は短く,中小企業にあっては役割こそ違え,強いパートナーシップで社長と社員が結ばれる。よい企業は社員も主体的に営業に関わり,総意と工夫で困難を乗り切っていく会社であろう。よい会社にあっては社長ばかりでなく,社員も自分の人生を自分で決めているという実感が湧いているのではないだろうか。これもまた自由である。質の良い商品を全社一丸となって作り,それが社会において正当に評価されている状態,それが中小企業にとって自主,独立した自由な姿では無かろうか。
 法律の世界では自由の保障は権利が侵害された場合にそれを回復できる状態を意味することが多い。社員一丸となってよい商品を作っても,大企業の不当な介入によって買いたたかれたりしていては正当に評価されているとは言い難い。中小企業に自由が保障されているというからにはこうした不当な評価を是正する手段が用意されていなければ自由であるとは言い難い。その法的手段として我が国には不正競争防止法,下請け代金法が存在する。新中小企業基本法では中小企業の競争力の強化をかかげているが,それを全うするためには独占禁止法などの実効性確保が不可欠である。最近活発化しつつあるが,2007年中小企業白書では370頁中,わずか6行で終わっている。