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№2309 経営者の生きた声に学ぶ

№2309 経営者の生きた声に学ぶ

1. なぜ,経営者から学ばなければならないか
 中小企業法務をめざす弁護士としてはすぐれた経営者の生きた声から現場の呼吸のようなものを学ぶことはとても大切だ。そうした勉強をして,依頼者が本当に必要な情報を提供できる。私たちのサービスは「顧客の期待を超える」ことができる。

 最近,盛和塾に入塾して稲盛経営哲学に集中して勉強しているのも,経営者の生きた学問を学ぶためだ。もちろん自分の事務所の発展という目的もある。価値(ポーターは、価値とは、バイヤが会社の提供するものに進んで払ってくれる金額と定義している)のすべてをあらわすものであるとしている。

 今勉強している講話は1979年JCでのものだ。塾長は1932年生まれなので47才ぐらいだ。会社創立21年目ということで,国内社員数は3700名,売上予定は700億となっている。米国には5つの完全子会社を有し,大企業に成長している。京セラはさらに発展し,稲盛氏はKDDI創立,JAL復興と偉業をなしている。我が国の事業家の倫理は儒教と結びついて論じられることが多い。稲盛経営哲学はそうした流れの本流の一つだろうと思っている。

2. 値決めは経営
 講演では「値決めは経営そのものと言ってもいいかもしれないと思っていますので,私は社内で『値決めは経営だ』とよく言っています」と述べている。
  稲盛経営哲学第5条「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」についての考え方も「マーケットプライスを元にして,他者とコンピート(競争)できる値段を考えますと,他者より安い値段になるわけです」しかし,一方で「利幅」を考えなければ商売にならない。「利益の合計は,売った量と利幅との積ですが,その最大値を求めようとしても,いろいろはファクターが入っており,簡単に解くことはできないのです。」

3. マネジメントによる差別化
 「安い価格」を提示した場合,利幅を作らなければならない。その場合,生産コストを所与のものとして利幅を考えるのではなく,生産コストも含めて工夫の可能性も含めて利幅を考える。会社全体のマネジメントを徹底して合理化してコストダウンを実現して「利幅」を作るという作業も含まれている。

 製品で差別化するだけでなく,マネジメントで差別化する。これは会社の全体を理解していないと値決めはできない。だからこそ「値決めは経営」だ。このことは繰り返し盛和塾でも語られているが,塾長47才という非常に脂ののった時期の言葉には今直面している意識が表れていて,意識が読む者に伝染する。

 マイケル・ポーターは著作「競争優位の戦略」中でバリューチェーンという考えを提案している。ポーターはバイヤが会社の提供するものに進んで払ってくれる金額を価値と定義している。この価値を生み出すプロセスは購買・製造・物流・販売・サービスという主活動と人事労務などの支援活動に分けて細かく分ける。これらのバリューチェーンの総合が価値となって表れる。競争優位に立つためにはこのバリューチェーンの仕組みが創造的であったり,総合的な調和があったり,各部が完全性を目指したりする必要がある。私には「値決めは経営」の一言にこのマイケル・ポーターの考えが表現されていると思う。

5. 商売の成否は経営者の考え方で決まる
 「売り手と買い手の間で利益のシェアを分け合うという葛藤にうまく対応できるのを私は偉いと思っています」(13頁)

  値段競争すれば,売値がただになるまで行き着く。一方で高ければ「あいつのところはどう考えても高い」ということになる。トップの正確が「えげつない性格の人はえげつない価格帯で値段を決めますし,気の弱い性格の人は気の弱い価格帯で値段を決めるわけです」「まさにばらんの問題なのです」

  そして,最後には「商いの極意はお客様に尊敬されること」で締めくくられている。「あなたの会社からしか買わない」と言ってもらえるようになる。

  こうした人格の高みを目指すことが事業者の勤めだという。バリューチェーンと言うと,非常な競争社会のようだが,稲盛氏が発すると魂が込められた言葉になってくる。

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    若き日の稲盛和夫盛和会塾長

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