№2284 キャッシュベースの経営
京セラ稲盛会長は企業家に対してキャッシュベースの経営をせよと教えている。誠和塾の例会でこのキャッシュベース経営の意味について議論になった。
ドラッカーは今の決断こそ大切だという
戦略上の意思決定において問うべき問題は、明日何をなすかではない。「不確実な明日のために今日何をなすべきか。」である。
The question that faces the strategic decisionmaker is not what his organization should do tomorrow. It is , "What do we have to do today to be ready for an uncertain tomorrow"
今の決断をするためには「今」を知らなければならない
稲盛会計という言葉があって,「複式簿記といった高度な会計手法で経営をしていく場合,会計士に説明をしてもら和無ければ,経営の実態がわからないようになっているのです。」という。さらに「損益計算書や貸借対照表では現金の状態がわかりにくいものです」といい,「工夫」がいるという。
工夫というのは精緻なものだ
この工夫というのが,まさに「今」を知ること,キャッシュベースで今会社はどうなっているかを知ることの工夫に外ならない。在庫が貯まれば利益があっても現金がない。貸付金が貯まれば利益があっても現金がない。含み損があったり,償却があったり,会計は過去の状態を知る上では重要だが,今を知るには複雑すぎる。加えて税務上の操作も出て現状把握するには適切ではない。稲盛会長はそう言っている。
売上を最大に,経費を最少に
企業の入りが多く,出が少なければ企業は儲かる。稲盛会長は単純なことだという。しかし,この単純な原理を経営に持ち込むためには「工夫」が必要なのだ。会計を税理士さんに任せっぱなして理解しようとしない経営者も多い。そこそこの企業でもそんな現象があるから驚く。「工夫」なき現金経営は自社の動向を正確に把握できず,いつのまにか借金が膨らんだりしている。
完璧主義の原則
高度化した会計原則を前提に,工夫を凝らし,「今」の状態を把握していく。「今」というのはまさに日々の現状で,企業によっては月次どころか,日次決算を実施しているところもある。日次で現状を把握する企業は会計上の完璧主義を貫いている。こうした経営者と接していると,私は経営に対する強い緊張感を感じる。この人は優れているな思う。
勘違いしてはならないと思うこと
完璧主義というのは何も手間暇かければいいというものではないと思う。稲盛会長はダブルチェックが大切という。その通りだ。しかし,手間暇を省略して,作業の時間短縮を追求するのもまた経営だ。シンプルさを追求してさらに「完璧」の完成度を上げるイノベーションに対する意志というのもまた必要なことだ。
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