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№2181 圧縮記帳に失敗した事例

№2181 圧縮記帳に失敗した事例

 税法上では補助金も「収入」なので法人税などがかせられる。補助金をもらって,そこから税金をとられるというのは,100万円差し上げますと言っておきながら,実は70万円しか渡さないと言っているようなもので,詐欺のような話だ。

 そこで,圧縮記帳という特別な税制度がある。補助金分を「損」としたり,積立金として収入から除外する方法といろいろあるが,詳しくは税理士さんに相談してほしい。

制度利用の手続きはきわめて厳格
 圧縮記帳は納税者が利用したいと言わなければ利用できない。税を値引きする制度だから(長期的には値引きにならないが),税法が定めた様式を厳格に守ることが要求される。

ときどきミスが起こります
 あまりに厳格なので時々ミスが起こる。税理士さんの中には事務員に任せきりにしておいたりする例もあるので,ミスに気づかないことがある。補助金を渡す行政側も適当なことを言うのでそれに従ったりするとミスが起こる。この時に,補助金分の収入をごまかしたことになってしまうので,更正決定がなされ,加えて過少申告加算税や延滞税などのペナルティーが課せられることある。

 しかし,少しのミスで多額の税を加算するのはひどいうことでいくつか裁判がある。

 事業用資産の買い換え特例の例だが,圧縮記帳の所定の様式を守らなかったために更生決定された事例がある。札幌地裁は様式を守らなかったのだから,しかたがないとかなり厳しい判決を出している(S62.5.8税資 158号561頁)。高裁もこれを支持し(S63.7.13税資 165号291頁),上告は棄却されている(H1.4.13)。

 こうした特例に対する厳格な考え方は税法特有の考え方で,課税関係の早期安定や納税者間の公平など国家財政政策上の要請から,例外を原則許さないという発想にたっている。

裁判で戦う方法
 圧縮記帳のミスを争う方法はいくつかあるがどれも悲観的に考えた方がよい。
1. 錯誤
 利用の意図を特別な事情によって勘違いしたという例だ。これは,錯誤が明白で,理由もやむえない事情があり,租税政策から言って看過できない不公正な結果がでないと認められない。これを利用することはお勧めできない。

2. 宥恕規定
  法律の条文に止む得ない場合については例外を認めると記載している場合がある。税法上宥恕規定呼ばれるものだが,天変地異など本人に責任のない事情がないとうまくいかない。強い行政指導に従ったら間違っていたような場合もありかもしれない。しかし,税理士さんが間違えていたというのでは,本人の地位と同じなのでこれは使えない。

3. 合理的意思解釈
  申告書上,明らかに圧縮記帳を利用しようという意図が現れているのだから少々のミスがあってもその利用の意図をくみ取るべきだという議論だ。これは,当該事例の何か固有の事情があれば可能性はあるが,厳格な様式性を考えると難しい。

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