私はかねてオープンイノベーションという言葉に強い魅力を感じている。
それは、大企業と大企業、大企業と中小企業、中小企業と中小企業と世の中にある企業同士が市場という自由な空間を相互に結びつき、相互に離れて独立し、また新しいものが生み出されていくというたいへんなダイナミズムが隠されている気がするからだ。
オープンイノベーションというのは、文字通り創造革新に関わる新しい時代の考察だ。大企業内において自社開発のアイディア、製品を篩い分け、市場に登場させていく過程をクローズドと呼ぶなら、オープンイノベーションでは自社内開発途上であっても、自社外に放出させ、逆に自社外の新しいアイディアを自社内に取り込むシステムをオープンと呼ぶ。
社会にはたくさんのアイディアがあって、そのアイディアを企業連携によって大きなものにしていく過程も含まれている。
自社内のいくつかのアイディアを自社では開発しなくとも、社外に放出することで連係し、大きなビジネスに結びつけるということもある。
つまり、「イノベーション」には常に「リスク」つまり不確かな部分(リスクというのは不確実性を言い換えた言葉だ。)を伴う。そのリスクの評価は主観的な判断に委ねられる部分がある。ある会社にとっては高いかもしれないし、低いかも知れない。そのメリットはある会社にとっては大きいかもしれないが、ある会社にとっては小さいかも知れない。
その時、ある会社はアイディアが無くとも、他社のアイディアについてリスクをとっても展開しようとするだろう。アイディアがあるがリスクを取りたくないが誰かに展開して欲しいと思う会社があるかも知れない。そこの連係によって具体化するという方式が生まれることになる。
これはけっして新しいことではないが、オープンイノベーションのアイディアはそれまで企業内で眠っていたアイディアをよりオープンにしたり、企業内から外に出て企業を興すスピンアウトに価値を置いたりしてさらに積極的に進める。あるいは、社会に無数にある企業を選び出していく過程も問題にする。リスクとイノベーションを分け合う企業の具体的あり方を研究する。
インターネットと運送手段の発達がもたらしているグローバリゼーションの時代にふさわしい新しい経済社会の仕組みを提案している点でとても興味深い。
この発想は宇宙空間で惑星同士が衝突し、あるいは銀河を作り、大宇宙を作るのに似ているし、陽子や中性子といった巨大な素粒子やクォークや電子、光子やニュートリノというようなあるのだかないのだか解らないような素粒子が衝突しては結合し、また離れていくのにも似ていて、大きなロマンを感じる。