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№1198 世代交代の失敗と破産の相談

№1198 世代交代の失敗と破産の相談
 最近、当事務所では企業破産事例が増えている。
 製造業ではリーマンショック以降の打撃に加えて震災、尖閣諸島ショックが乗り越えられずついに倒産という事態になっている。

 最近の相談でいくつか共通しているのは、大きな災いの中で世代交代に失敗して倒産に至っている例が多いことだ。その中でリタイアしたはずの会長の口出しが多いことが問題になることが多い。

 財務処理はある意味職人芸的なところがある。ものの売れ行き、仕入原価の推移、従業員の作業効率や人件費の調整、借金の返済など様々な要素が複雑にからみながら総合的に判断しなければならない。こうした調整は社長が長年積みかねて獲得してきた感のようなところがある。

 リタイアした会長は若い社長にこの「感」がないことを心配する。そのため、リタイアしても財務を握る例が少なくない。若い社長からすると、自分の利益のために財務を握って離さないと思い、自分は名ばかり社長だと感じたりする。

 ともかく、財務を会長が握る例は誤りだと思う。財務は当然、財務諸表によって透明化が図ることができる。財務上の判断についてはルールがあって、そのルールを整理すれば職人芸的「感」も承継することが可能だ。すぐれた税理士や会計士がいればこの「感」の押さえ方を手伝ってくれる。

 破産する例だが、こんな具合だ。
 会長が財務を握っていると財務と経営が分離する。若い社長は財務上の危機が十分把握できない。さらに、商品の利益率、粗利すら把握できない。従業員の作業能率(従業員がいかに利益を生み出すか)も把握できない。当然、責任持った決断ができなくなり、自信も失う。

 ある意味、羅針盤無くして海に出ているようなもので、何をしていいか分からなくなる。 会長は自信を失った社長にものを言い、社長はますます自信を失う。さらには会社からも「ダメな若社長」というレッテルを貼られたりする。

 会社の業績がよければ、こうした矛盾は表面化しにくいが、昨今のように不景気が構造化するとそうはいかない。私の目から見ると仕事があり、きちんとやれば潰れなくてもよいような会社が潰れていく。

 少なくとも財務面からすると、明確で透明性ある財務の確立は不可欠だ。優秀な税理士、会計士の助けを借りて、完璧な財務体制を組み、経験不足の若い社長が財務を掌握して積になる判断が行える立場を築くことが最小限必要だろう。