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№2321 京セラ会計学

№2321 京セラ会計学

  京セラの会長が会計のあり方を微に入り細に入り語るの原則化して語るのは驚くべき事だ。講演記録読んでいると,稲盛会長にかかれば,京セラのような大会社もまるで中小企業のようだ。

【目次と私のコメント】

第1章 本質追求の原則
 京セラ会計は経営者が会社の今を知るために,会社の実相が直ちに正確にわかることを本質としている。その上で,社長は様々な経営判断をしていくことになる。

[1] 儲けた金はどうなっているか
 利益は在庫となったり,発生主義から回収なくても利益となったりして一般の会計からすると利益が出ても使えない状態が生じる。「儲けた金はとなっているか」というのは会計は今の経営の実相を正確に反映するものでなければならないという問題提起だ。

[2] 設備資金の回収,借入限度額は減価償却+税引き後利益の範囲内

[3] 常に余裕のある経営をする。「土俵の真ん中で相撲をとる」
 経済的に追い詰められて土俵際で会社が生き残っても何も偉くない。会社経営を余裕のある場所,つまり内部留保を分厚くして安全な場所で相撲をとる必要がある。

[4] 会計資料は経営者の補佐的役割を担う具体性を持ったものでなければならない
 税務上の会計は経営判断にはすぐには役立たない。昨年の決算がわかっても今の状態がわからないと判断できない。会計資料は経営者の今の判断を助けるためのものだ。

[5] 売価還元計算方式の合理性
 在庫は現在売価を基準に判断しないと,財産が膨らんで表現されてしまう場合がある。経営の実相を知るためには,在庫の現在売価を基準にするべきだ。

[6] 有税でも損金で。常に厳しい状況に自分を置く
 機械の消耗が激しく,実際の耐用年数が税法上の耐用年数よりも短ければ,その短い年数を基準にするべきである。それが税務的には損失となっても,経営の実相を成果に把握するためには必要である。

[9] 経理を知らない者は真の経営者にはなれない

第二章 保守危機の原則
[1] 将来に備えた保守堅実の会計
  「損失として挙げるべきものはなるべく早く挙げ,一方,利益となるような,収益となるようなものはなるべく押さえて,上げないで将来の収益に備える体制をとってきました。」

[2] 未経過分を資産に計上しない

[3] 内部留保を厚くして財務体質を強化無借金経営に

第三章 ハングリー精神の原則
[1] ケチケチ精神を忘れずに

[2] 機械設備は中古品を工夫して使う

[3] 固定費の増加を徹底的に警戒する

[4] 予算制度は無駄遣いのもと
 予算制度を重視すると予算は確実に使い,収入は予算通り入ってこないという現象が起こる。支店を増やして人員を増やしても売上は増えない「いやあ,頑張ってはいるんですが,いまちょっと不景気でなかなかいきません」と言い訳ばかりになってしまう。

第四章 健全資産の原則
[1] セラミック石ころ論(体質をスリムにして不良債権を抱えない)
  セラミックも使われなければただの石ころ,価値のないものである。

[2] 金型は償却ではなく,有税でも経費で落とす
  本当に資産価値あるかどうかは経営者が考える問題である。

[3] 資材一升買い論
 「一升ずつ買うのは高くつきます。一斗樽でまとめて買えば安くなりますよ」と言われても私はあえて一升で買う,一斗樽で買うことはまかりならんと言い続けていました。

[4] 不動産投資は工場増設のみに(浮利は追わず,額に汗して利益を得る)

第五章 採算性向上の原則(社長の魂の注入で採算性向上の土俵を作る)
[1] 時間当たりには社長の魂が
 アメーバ経営は時間当たり採算性度を重視する。一人の社員が時間当たりどれほどの価値を生み出したかが数字という形で表現される。これは表現されるだけで,付加価値に向けた土壌を作り上げていくことが求められる。

[2] 従業員のみんなががんばってくれるから
 従業員がその気になってくれないかぎり会社は立派にならない。

第六章 完璧主義
 会計や仕事が完璧にできて初めて会社の実相は把握できる。
[1] 長たる者はミクロもわからなくては
   会計の細かいところまで理解できる能力がもとめられる。

[2] 100%達成でなければ

[3] 社長の洞察には神通力が
   「本当に精魂込めて数字を見ていると,間違ったところの数字が助けを求めて私の目に飛び込んできます。」

第七章 1対1の原則
 事実は一つしかない。作ることはいっさいできない。要は原則を守ること

[1] モノ・金の動きと伝票の対応は必ず1対1で処理しなければならない。
  モノ動けば必ず納品伝票も動く,これをあらゆる瞬間に実施ないと,売買が放置され,未回収となったり,顧客との信用トラブルを起こす。

[2] 売掛金・買掛金の入金・支払いの取り消しも1対1の対応で

[3] 売上と仕入れの対応も1対1

第八章 ダブルチェックの原則
 京セラの会長がここまで細かく会計を指示するとは驚きだ。

[1] 会計記帳者と金銭出納責任者との分離して,ダブルチェックして不正を防止する
[2] 手持ち現金高の監査についても,複数でチェックして不正を防止する。
[3] 支出の監理についてもダブルチェックして不正を防止する。
[4] 印鑑の捺印と保管についてもダブルチェックして不正を防止する。
[5] 金庫の開閉についてもダブルチェックして不正を防止する。
[6] 物品の購入についてもダブルチェックして不正を防止する。
[7] 不利掛金の管理についても経理と営業がダブルチェックして不正を防止する。
[8] 買掛金の管理についてもダブルチェックして不正を防止する。
[9] 作業くずについてもダブルチェックして不正を防止する。
[10] 数字は必ず二算で。二重の方法で計算して正しさを検証する

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