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№1186 海外リスクの定量化

№1186 海外リスクの定量

 海外進出へのリスク要因をいかに定量化するは経営学の大きな課題になっているのだそうだ。定量化しようが何だろうが、やる時はやるという中小企業にとっては余り縁のない話なのかも知れない。しかし、中小企業のオヤジの勘も、こうした研究を知ることで鍛えられるんじゃないだろうか。

 ゲマワットさんはハーバード・ビジネス・レビューでCAGEという4つのフレームを提案した(2001年)。
    ① 国民性の距離(Culture)
    ② 行政上の距離(Administrative)
    ③ 地理的な距離(Geographic)
    ④ 所得格差(Economic)

 この4つはリスク要因だろうなというのはシロウトでも察しがつく。定量化という点でも③、④はできそうだ。②の行政上の距離についても手続きの複雑さや賄賂など何となく数値化できそうだ。

 経営学の大きな課題になっているのは、一番目の「国民性」の数値化だという。この点を研究したのがヘールト・ホフステッドさんで、「ホフステッド指数」は超有名だということらしい(1980年)。この人は各国の国民性について、
    ⊿個人を重んじるか?
    ⊿権力の不平等を受け入れているか?(たぶん従順性のことだろう)
    ⊿不確実な傾向はあるか?
    ⊿自己主張を重んじる男らしさはあるか?
といった4次元の座標を用意して定量化した。

 同じような手法で定量化したのがロバート・ハウスさんで、GLOBE指数(Global Leadership and  Organizational Behavior Effectiveness)という9つの座標を提示した(2004年)。9×2ということで18の座標になるということだ。しかし、国民性という抽象的なテーマは余り細かく指標化するとかえって分からなくなるんじゃないかという気がする.細かすぎることで実は人の裁量が入りすぎるということは普通にある。

 宗教的であるとか、集団主義的であるとか、閉鎖的であるとか国民性のリスクはいろいろある。私などは国民性はやはり定性的な判断なのであまり定量的なことにこだわるのはいかがなものかという気がする。定量化するならホフステッドさんのように簡単な座標でやるべきだし、定量的判断はあくまで定性的判断の補助材料でしかないような気がする。

 似たような分析で日本は集団主義的かというテーマがあったそうだ。日本は欧米人より集団主義的で、中国、韓国人より個人的なのだそうだ。「集団的」というのは身内には助け合いがあるが、対外的には閉鎖的ということで、欧米人の方が対外的には友好的な国民性なのだそうだ。 

 → Book 「世界の経営学者はいま何を考えているのか」(入山章栄:英治出版

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