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№873 運送上の破損

№873 運送上の破損

 韓国に輸出中の機械が、航海中に、輸出代行業者が委託した運送業者の船積み方法が不適切であったために損傷した場合に、輸出代行業の委託契約に基づく債務不履行責任及び運送業者の不法行為責任を認めた事例(判タ1353、210頁)。

 
 運送中に船荷が破損した場合、普通は運送業者が賠償責任を負う。破損部分の修理費用や積荷が利用できなかったために被った損害も射程に入る。今回は輸出代行業、運送業者と登場してくるので、契約関係を少し整理することになる。

 まず、原告は被告A社に対して、鉄加工の工作機械の輸出税関、船積み手続きを27万8900円で委託した。A社は、B運輸に本件機械の本船への引渡業務を委託した。

 B運輸は本件機械をバンニング(積荷として準備する)作業を行い本船に引渡し、機械は無事韓国に到着した。ところが、コンテナを開けてみると機械が壊れている。荷造りが不適切であったために運送中に積荷が移動して損傷したのだ。おかげで原告は修理費用約400万円を負担することになった。

 そこで、原告はA社とB運輸に400万円の損害賠償請求を起こした。
 両社は特殊工作機械なので荷造りについて原告がきちんと説明するべきだったと主張した。しかし、裁判所はこのような主張を受け入れず被告らに支払を命じた。

 この事件自体は単純な事件だ。しかし、実際の事件になってみるとけっこう難しい。例えば、原告の立場に立って見た場合、本件損傷がどうして生じたかを立証しなければならない。コンテナの中で船荷が移動してどこかにぶつけて破損した訳だが、原告の手を離れてしまっているので、中々情報が集まらないことがある。

 こうしたトラブルが起きたときには直ちに証拠の収集を確実にしておくことが必要だ。破損して積荷を見たときの状況、機械の位置、切れたベルトなどだ。質の高い企業は、問題が起こったら必ず証拠を残しておくということが会社として習慣化されている。