名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№825 人生の成功

№825 人生の成功
 人生での成功というのは実はよく分からない。

 うちのばあさんなどは、洋服生地の行商をしながら夫の家計を助け、2人の子供を大学にやった。子供たちはさらに孫を生んでそれぞれ生活している。今年の10月には初孫が結婚する。ばあさんはこれほど幸せなことはないと喜んでいる。3年前にじいさんは死んでしまい、残ったばあさんは早く死にたいと言っている。子供より早く死にたいそうだ。

 大阪ウェルディング社は中小企業としてはそこそこ成功を収めていた。社長が上海進出を決意し、工場が上海にできたのは2001年のことだった。社長60代のことだったらしい。それから10年。上海工場は成功を収め、2007年からは中国東営市にも進出を進めている。この社長を見ているとどこまでも前に進んでいこうとしているように見える。

 中国東営市に進出しようとしているある会社は、10年海外進出を悩み、ウェルディング社と出会ってことで決意を固めた。現在はウェルディング社とともに東営市に新たな工場を作ろうとしている。この社長はウェルディング社社長よりも若い。しかし、子供が大学に行き、子供が会社に戻ってくるまでに会社の最後の足場を作り上げておきたい考えている。社長と話していると社長が日本の将来を考え、自社の行くべき方向を見つめていることが分かる。中国進出を決め、この先、必ず成功するべく邁進することになるだろう。

 ある会社も十分な信用を得て、借金もなく、普通に仕事をしていれば必ず利益があがるようになった。社員も育った。子供は会社を継がないが、社内には会社を継いでくれる者は育てた。60才にして会社の引退を決意し、事業は後継に譲ることを決めた。自分は新たな事業を興すという。長年にわたって暖めてきた芸術に関わる仕事、若い芸術家が育つような事業を進めたいという。
 
 人生の成功とは分からない。経済的な成功は要素の一つかも知れないが、結局のところ自らに羞じない生活を積み重ねること以上の意味はないように思えてくる。それは天に即して生きた、天がその人に与えた人生だったという悟りに似た感じだろうか。

 人生の成功はその人が成功と思わなければ誰が評価しても成功とは言えないし、その人が成功だと評価すれば誰が評価しても成功ということになる。これは人の介入できない絶対的なことがらだ。私たちが人生の評価に「天」を持ち出す理由もこういうところにあるかもしれない。