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№700 我が友、ムカデくん

№700 我が友、ムカデくん
 ムカデは私の友達だった。

 大学時代私の下宿は京都北白川にあって、瓜生山さらには比叡山に連なる山の中にあった。一戸建てのご機嫌な山荘のような建物で、裏は、名前は忘れたが大昔の天皇の息子さんの墓で宮内庁が管理していた。まあ、墓守のような小屋だった。
 
 このような山の中なので、大ナメクジ、ムカデ、ゴキブリ、カマドウマといったいろいろな魑魅魍魎が跋扈していた。なかでもムカデは私の友達だった。ムカデと言えばかまれるととんでもなく痛い。だから、見つければ殺すというのが山の中では鉄則だ。
 
 ムカデは暖かいところが好きで、知らない間に布団に入っていることもある。ムカデが寝ている間に鼻の穴に入ったという身の毛もよだつようなおそろしい噂が近所の子供たちの間でまことしやかに話題になっていた。隣の女の子は近所に50cmもあるオオムカデが洗濯機の中で死んでいたと言っていた。たぶんそんなムカデはいないがいたらすごい。
 
 近所に住んでいた中国人が、ムカデに噛まれて大騒ぎになり、救急車が出動した。なんでもサソリに刺されたということだったらしい。そういえば、中国でサソリを食べたことがあるぞ。
 
 ともかく、あぶないので見つけたら殺すというが鉄則だ。で、なんで友達かというと、私はムカデの気配が分かるのだ。下宿に帰り、ああ、今日はムカデがいそうだと思ってハッと天井を見るとムカデが張り付いている。
 
http://ukiyoe.cocolog-nifty.com/blog/images/2008/08/07/fairy15.jpg 今日は洋服ダンスの裏に居る気がすると思うとやっぱりムカデがいる。あれ、布団の中にいるかもしれないと思うとちゃんといる。裏の山を歩いて、あれ、ここにムカデいるんじゃないかと石をひっくりかえすとムカデくんがいる。
 
 最も感動した体験がある。なんだかムカデに出会えそうな予感がした。どうも卵があるんじゃないかと思って石をひっくり返したらなんとムカデの母が肝油のような卵を抱いていたのだ。
 
 おお、こんなところに、と思い、卵を木の枝でつついて取り出そうとすると、いっしょうけんめい卵を加えて引き戻すのだ。普段は臆病者で一目散に逃げていくムカデだが、このときは逃げない。
 
 ムカデの顔を見るとけっこうかわいい。モンシロチョウやカミキリなんか本当に醜い。
 
 平安時代中期、源頼光の四天王の一人、俵藤太(たわらのとうた)が三上山でオオムカデを退治したが、このときに矢につばを吐きかけて射殺したという伝説がある。私もムカデを捕まえてつばを吐きかけてみたが死ななかった。