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№517 金融交渉アラカルト

№517 金融交渉アラカルト
 ちょっと前、金融交渉について考えるところがあって、まとめてみた。
 弁護士は金融交渉という点ではシロウトだが、いろいろな情報を整理しているから役に立つんじゃないかな。
 
■ 事業者の姿勢
  どのような場合でも諦めないで食い下がっていく事業維持に向けた強い意志が必要だ。事業者はどうせシロウトなのだからシロウトなりに食い下がることが肝要だ。専門かぶって話をしてもあまり役立たない。

  交渉においては、基本的にとしては返済の源資をどうするか、どのように返済していくかの説明が必要となる。その説明については資料に基づいた、ある種の合理性が求められる。重要なのは経営の展望に対する丁寧な説明である。
 
■ これだけは確認できるようにしておこう。
    支払源資の有無→営業利益=売上げ-仕入れ-経費(販売費及び一般管理費)>0
  返済可能性→3ヶ月から6ヶ月程度の短期の資金ぐり
          +中期の事業計画(1年程度)+長期の事業計画(3年から5年)
          
■ 金融交渉アラカルト
 (ア) 経理状態について自社のことを自分で説明できるようにする。
   ① 営業利益の状態などある程度説明できるようにする。
   ② 説明に際しては簡単でも資料を用意する。

 (イ) 経営努力をいつも行っていることを説明する。
   ① 経営状態の悪化の理由について説明でき、固定費の削減、資産の売却、保険の解約などそれなりの努力を行っていることを述べる。
   ② どの業種も悪い、国の経済が悪いなど一般論だけを述べない。
 
 (ウ) 個人的資産についても相応の負担をして努力していることを説明する
   ① 社長自身の会社に対する貸付金、個人資産の放出などそれなりの努力をしていることを示す。

 
 (エ) いつも、前向きな話をし、事業の持続性、なんらかの発展性を説明する。
   ② 短期(半年程度)、中期(2年~3年程度)、長期(5年~10年程度)について資料をもって説明できるようにする。
   ③ 後継者がいれば、なお良い。事業の継続性をアピールできる。
 
 (オ) 融資の目的についても、借り入れが何らかの事業展開につながるよう説明する。当面の資金繰りに必要というでは、次につながらない。
 
 (カ) 顧問の税理士、弁護士などを積極的に活用する。
   ① 「うちの先生は帳簿、申告だけしかしてくれない。」と諦めないで、資金繰り表や事業計画についての相談をしてみる。
   ② 十分な対応ができない場合には顧問税理士を変えることも視野に入れる。
 
 (キ) 金融機関に対して誠実さを示していく。その誠実さとは情報の開示と丁寧な説明である。前向きである限り、どうしたらいいのだろうかという相談も可である。
 
 (ク) 金融機関の説明をうのみにしないで、納得できない対応については食い下がり、交渉上どこが問題になっているのかを正確に把握していく。金融機関も自らの利益を目的に動く。あなたのために常に動くとは限らない。
 
 (ケ) 金融機関との交渉のチャンネルを多くする。
   ① 窓口担当者に能力が無い場合がある。あるいは金融検査マニュアルからはずれた対応をしたり、脅かしたりすることがある。この場合には支店長に伝えたり、様々な形で上司に伝わるチャンネルを用意することがよい。
   ② 余りにひどい場合には財務局からの指導も視野に入れる。但し、銀行との信頼関係を維持できるかの評価を正確にする。
 (コ) 保証協会に対する直接交渉の視野に入れる。
   ① 保証協会とは直接交渉できることを知っておく。銀行は正確に保証協会に情報を伝えているとは限らない。
   ② 保証協会の商品を理解しておく
 
 (サ) 他の融資先も念頭に入れる。
 
■ 近時の金融機関の対応は大幅に柔軟になっている。現状については正確に説明する必要がある。これは事業者が自社の状況を説明できないでは、事業管理が不十分で将来性を疑われてしまう。

  将来像については明確なものを作ることは不可能である。企業の場合、3ヶ月先ぐらいまでは確実だが、それ以上になると見込みを述べるほかないことがある。まして、3年後、5年後の将来像を正確に述べることは不可能である。しかし、何らかのデータをもって将来像を語ることが必要である。現実的な戦略を示して、前向きな事業姿勢を明らかにする。そのデータは何らかでよい。

  後継者がいるかいないかは中小企業に対する信用力を左右する。