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№516 「アジア『内需』」

№516 「アジア『内需』」
 世界経済評論が「『アジア内需』は日本経済のフロンティアたりえるか」という特集を組んでいたので読んでみることにした。
 
 中国、韓国、ASEAN、インド諸国の市場を私たちは「外需」としてとらえているが、この特集は「内需」として考えてみようというところか。市場のグローバル化が進み、相互の依存関係が進む中、アジアはよその国でなくなっているということだろう。
 
 特集の基本的問題意識は、①アジア全体が急成長し、市場の融合化が進んでいる、②日本がアジア内の圧倒的なナンバーワンではない、③少子高齢化の中で日本固有の内需は先細りであるというところにある。いずれも危機意識が大きく出た内容だ。
 
 特集ではいろいろな角度から分析した論文が発表されている。経済を専門に勉強したことのない私にはかなり難しい。
 
 さて、「アジア内需」という時、アジアの市場というのはどのようになっているのだろうか。
 
 安積敏政(甲南大学)によると、アジアのなかで2008年GDP比日本のGDPは3分の2近くを占めたのに、2015年には3分の1程度を占めるになるという。日本、アジアの経済分析はいろいろされているが、中国が牽引役となってアジア全体の経済が成長する一方で、日本の地位は急激に低下していくという分析は論者に争いはない。
 
 問題は、アジアの市場というときにその構造がどのようになっているかという点である。欧米市場との関係はどのようになっているのだろうか。各論文を読むとこういうところの問題意識は高い。
 
 木村福成(慶応大)はアジア市場の米国市場への依存の程度について問題提起する。中国、アジアで部品を組み立てて北米に輸出するという構造は変化を見せているという。その傾向は、アジア内貿易で機械完成品の比率が徐々に増えていること、完成品の北米市場への輸出は徐々に低下していることをあげる。
 
 つまり、完成品の最終消費国は北米市場から、アジアを中心に国際的に分散化しているということらしい。こういった傾向は何となく納得できる。もっとも、北米市場に向けられた製品はさらにアジア各国再び売られるということになると、北米市場の向こうにさらにまた欧州や、アジアがあるということになるのだろうか。
 
 「市場」とは日本、中国、アジア、欧米と相互にからみあっていて単純ではない。日本の中小企業が作った部品は世界のあらゆる場所で消費される。日本の中小企業が作った製品も同じだ。グローバリゼーションに対する理
解は中小企業経営,中小企業政策を考える上でもはずせない。
 
 グローバリゼーションの流れは止められない。今や「アジア『内需』」という思い切った問題提起ができるまでになっている。中小企業もこうした歴史の流れで生き残りをかけなければならない。