№506 役員個人の破産と退職年金(こんな税金問題が?!)
労働者は労働法制によって保護されているが、役員はその保護の対象外である。役員報酬や役員退職金は通常の貸金と変わらない扱いをされてしまう。
労働者は労働法制によって保護されているが、役員はその保護の対象外である。役員報酬や役員退職金は通常の貸金と変わらない扱いをされてしまう。
事例は退職年金制度のある会社役員が破産した事例だ。この役員は年360万円を10年間もらえるという退職年金をもらうことになっていた。ところが、この役員は多額の債務のために破産してしまった。
老後の生活費とはいえ、役員の退職金だったので譲渡は可能だということだろう。これが、労働債権だったら、売却は困難だ。
破産終了後は退職金のための年金を取得したため、債権回収会社が毎年360万円を受領することになる。役員がもらえることはない。
毎年、直接、360万円を回収会社が受け取る。
【思わぬ税金問題の発生】
こうして、破産が終わり、役員は借金から解放された。
ところが、課税庁は改めて退職金に所得税をかけてきたのだ。
すでに、売り渡し、お金を得ているのは回収会社だ。しかし、税金を払うのは役員個人だというのである。
つまり、破産後であっても、毎年360万円の支払いが生じている。この債権は本来役員が受け取れるものだったから、役員の報酬だというのである。
課税庁の言い分は何を言っているか分からない。
債権譲渡によって退職金の全部は売られてしまった。役員は一文無しだ。それが、どうして役員の報酬が発生していると言えるのだろうか。課税庁の言い分はたぶん、一旦、役員が受け取ったものを債権回収会社が受け取っているという考えなのだろう。こんな考えはあり得ない。
案の定、課税庁の処分は審判所によって取り消されている(裁決事例集№76巻97頁)。
この事件の教訓は課税庁が法律的な考えに余りにも無知であったということだろう。
もっとも、課税庁にも言い分はある。所得税法36条は将来定期債権について、支払日をもって収入金額としている。つまり、本件では退職時に全額課税できない。一方で、支払日には譲渡済みであることから課税できないというジレンマに陥る。どこかで課税すべきだという考えだろう。
もっとも、課税庁にも言い分はある。所得税法36条は将来定期債権について、支払日をもって収入金額としている。つまり、本件では退職時に全額課税できない。一方で、支払日には譲渡済みであることから課税できないというジレンマに陥る。どこかで課税すべきだという考えだろう。