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№459 土地活用と居住権

№459 土地活用と居住権
 土地活用というと、一般の人からはマンション経営などが浮かぶ。不動産業者も土地活用と言うことで、オーナーに話を持ちかけ、マンションを建てて、賃貸経営を進める例が多い。業者はオーナーから建物を借り受け、さらに一般の入居者に貸していく。元から借りる賃料と、転貸の賃料との差額が利益だ。
 
 これはサブリースと言われている業態で、その形態も様々だ。オーナーの資金で建物を建てる場合と、建物建築資金も業者が提供する場合がある。
 入居者があってもなくてもオーナーへの支払いを保証する方式と、入居がなければオーナーは賃料収入が減るという方式とがある。
 
 ところで、
 土地や建物の賃貸借契約では借地借家法が適用される。土地、建物は人の生活にはなくてはならないもので、明日から出て行けということはできない。そこで、借地借家法は賃貸借契約の解除についてはきわめて慎重だ。俗に言う「居住権」ができて、貸したら返してもらえないとはこのことだ。ちなみに、法律用語からすると「居住権」という言葉は使いません。
 
 サブリースの場合はどうだろうか。不動産業者は商売でやっているので、居住の利益をもっている訳ではない。賃貸借契約が解除されても、すぐに生活が立ち行かなくなって困ることもない。そこで、「居住権」のような保障をしなくてもいいんじゃないかという議論がある。
 
 最高裁判所はサブリースであっても借地借家法の適用はあるとした(最三小H15.10.21判タ1140号68頁)。もっとも、直ちに居住の利益がある訳ではないサブリースについては普通の賃貸借契約とは別に考えても良いかもしれない。
 
 例えば、契約期間満了であっても、借地借家法では「正当事由」がないと解約できない。サブリースの場合ははもともと、期限内に返すということだったのだから解約を許してもいいんじゃないかと思う。しかし、最近、サブリースであっても明け渡しはきびしく制限するという判決が出た(札幌地裁h21,3,18 判タ1317号195頁)