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№422 演習 独禁法。totoroさんの相談

№422 演習 独禁法。totoroさんの相談
http://blogs.yahoo.co.jp/lawyerkago/31209158.html に対するtotoroさんの発言から

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独立に伴い引っ越す先がアパートで、そのアパートには据え付けのプロパンガスがあります。アパート自体が特定のガス業者と契約していて、そのアパートに住む限り、そのガス業者を使わなければなりません。

昨日こそ、そのガス業者より「ガスの開栓時に保証金として、1万円頂きます」と言われ、揉めました。消費者としては「他の選択肢が無い」ため、呈示条件を呑まざるを得ません。
(続く)
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 確かに、保証金は何のために求められるか分からない。ガスを開栓するのにどうして必要なのだろうか。

 独占禁止法2条9項5号は優越的地位の濫用を禁止している。同号は「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」を禁止している。これは次の要件とされている。
 
① 継続的な取引が行われ、一方が取引先を変更することが困難であって、一方がが取引上優越した地位にある場合であること。
 ② 当該取引の条件又は実施について、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるような行為であること。

 これは、一方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害し、また正当な条件で受け入れようとする者や事業者の競争者を競争上不利にさせるおそれがあるものであるとされている。
 totoroさんの事例だが、マンションの設備を扱える事業者は相手業者しかいない。totoroさんはガスが必要だ。継続的な関係にあって、取引先を変更することが困難といいうことになるかな。一応、ガス業者は優越的に地位にある者と言える気がする。

 保証金を取ることが、「正常な商慣習」に照らして不当と言えるかという問題がある。察するところ、保証金の意味が分かりません。何のために保証金を取るのか不明であり、合理的理由がない無駄な出費ということになる。

 無駄な出費ということになると「正常な商慣習」にはならないかもしれない。
 ところで、公正取引委員会には、「適正なガス取引についての指針」というのがあって、ガスの解約補償料については次のように考えているようだ。

「不当に高い解約補償料の徴収
 需要家との契約期間の設定や契約期間中における解約に係る補償料の設定をどのように行うかは、原則として事業者の自主的な経営判断に委ねられている。」

http://www.jftc.go.jp/dk/gas.html