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№257 危急時,納入商品の取り戻し

№257 危急時,納入商品の取り戻し
 倒産にあたって,納入した商品を取り戻すことができるだろうか。
 いかなる根拠があろうとも,勝手に持ち出すことは許されない。これは,法律が自力救済を禁止しており,常に法の手続きによらなければならないとしているからだ。

■ 所有権留保
 商品や原材料を継続的に納入する場合には,基本契約を締結しておく例が少なくない。この場合,納入商品について一定の場合に初めて(例えば転売されたとき)に所有権が移転するという契約を締結することがある。これを所有権留保という。但し,この場合,所有権留保した商品が特定できていなければならない。他社の商品と混入して区別できなくなると,意味が無くなる。

■ 契約解除
 売買契約を解除することによって物品の返還を求めることができるだろうか。理屈上,契約は解消され,買い主には物品の返還義務がある。返還義務がある以上は,上記の所有権留保と同じ取り扱いとなるはずだ。

 しかし,返還義務自体が債権的な義務であるため,買い主がそのまま破産した場合には一般債権として扱われることになるのではないかと思う。つまり,金銭賠償の問題に変化して,配当の範囲でしか利益を受けられないということになろうかと思う。

■ 自主的返還
 上記はいずれも買い主に義務がある場合をいうが,その場合,買い主があくまで返還しないとした場合には強制執行しかない。大量の商品を在庫中から選び出し,強制執行することはきわめて難しい問題がある。自主的返還を求めるより外はない。自主的な返還自体は破産前である場合には法的に返還請求権がある限り正当化されると思われる。

■ 自主返還と債権者平等
 破産前,破産直前の買い主が自主的に売り主に返還することはできるだろうか。それは債権者平等の原則に反しないだろうか。先取特権があるような商品は別除権があるから,債権者を害することはない。

 また,賞味期限のあるような物品については早期に返還した方が,債権者に有利であることはもちろんであるし,倒産会社にとっても廃棄処理費用などを考えると有利だ。こうしたことから返品処理も可能と思う。