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№243 債務整理は罪悪?

№243 債務整理は罪悪?
 債務整理は借金を切り捨てる作業であるため罪悪感が伴う。借りた金は返すという倫理は当然のことだ。事業再生で有名なセントラル総合研究所の本,「借りたカネは返すな!」などというショッキング題はキャッチとしてはいいかもしれないが,モラルハザードを堂々と宣伝するというのはどうかと思う。

 事務所に相談に来られた事業者の方々は,この義務と現実との間であえぎ,苦しさに押しつぶされそうになっていることが多い。弁護士の役目は依頼者を救済し,未来への展望を切り開く道を一緒に考えるところにある。債務整理の社会的な意味についての理解は不可欠だ。

 私達は,まず,思い悩んでいる依頼者に対して,悩んでいること自体が正当であることをお伝えする。事業者は悩まなければならない。
 債務切り捨ての反倫理性に対する罪悪感は今後の事業を発展させる上できわめて重要だ。2度とこのような失敗はしないとか,迷惑をかけた皆さんへの罪滅ぼしとして事業を成功させるとか,さらに,社会に貢献していくということは,失敗がバネになるのではないかと思う。経歴としては傷が付くが,その後の努力の結果として人格の大きさをつくる。節くれ立った巨木が美しいのと同じだ。

 一方で,債務を切り捨て事業再生を図ることの社会的意義について検討する。
 あなたの事業が継続することで,あなたを信頼して仕事を頼むお客さんへの迷惑は少なくなる。あなたの事業が継続することで,あなたを頼っている社員の生活を維持できる。あなたが事業を継続することで,あなたしか頼りがいない家族を救うことができる。あなたが,事業を継続することで,ここにある工場,機械,事務所は無駄にならずにすむ。あなたは社長なのだから,泥をかぶる覚悟を決めて下さい。手術無くして大病を直すことはできません。

 世の中では法律はとても大切だが,実際の場面は倫理や力関係と呼ばれる交渉で決まっていく。ある意味で,何もかも居直られると法律は弱い。このような法の弱さを制度化したの破産法などの債務整理関係法だ。強制には限界がある。むしろ,弱いところを制度化して,関係者の利益を最大化していこうというのが,法が考えなのである。