戦国時代が終わって江戸時代になり泰平の世の中になっていった。余った戦費は消費に使われ元禄時代を産んでいったということだ。商売は繁盛し,江戸や大坂では商人が闊歩する。商人が闊歩する社会はなんだか自由でうれしいと思いませんか。」
赤福の教訓を勉強しているうちに江戸時代の家訓に興味を持った。「商いの原点」(荒田弘司著)は江戸時代の商家の家訓を紹介したためになる本だ。三井,大丸など今では名だたる「大だな」の原点が紹介されている。
三井の元祖高利は寛文13年(1673年)江戸本町に呉服店を開店した。高利は実に52才であったというから大いに励まされる。ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダースもフランチャイズを起こしたのは65才だったというから,チャンスというのは死ぬまであるものだとうれしくなる。
高利の店は最初の間口は9尺程度,資金がないから現金商売しかできない,手代も十分でないから主人自ら売掛金の集金にあたったということであるから最初は大変苦労したらしい。それが,「現銀掛け値なし」と商売を始めまたたくまに大きくなっていった言うのであるから,「アメリカンドリーム」ならぬ,「大江戸夢物語」ということなのでしょう。
優れた商売人は優れた商法を持つわけだが,それは優れた組織力も兼ね合わせることになる。高利は明確な経営理念を持ち,社員を大切にしていたらしい。
「名将の下に弱卒なし。賢者能者をするに最も意を用いよ。下に不平怨嗟の声なからしむる様注意すべし。」として,高利は能力ある者をもちいることに心がけていたということである。しかし,三井の家訓,経営指針を見れば,よく人が育ったのだろうと思う。「名将の下に弱卒なし」とは,名将は人の才能を見抜き,磨き,凡庸に見えても有能な武将に仕立て上げていくということではないだろうか。そのように読めば,なかなか味のある文章ということになると思う。