名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1 中小企業の「生存権」?

08年06月20日 

 中小企業の「生存権」という考えがあります。中小企業の活動は事業者や社員の生存に直結するものであるから中小企業の「生存権」という視点から保護政策を実施するべきであるというのです。しかし,企業である以上競争社会に事業を興し,事業を維持し,事業を発展させるという考えが必要ではないでしょうか。中小企業は顧客との距離近いため,市場の「現場」での情報をリアルタイムで受け取ることができます。企業と顧客との日々のやり取りは事業の持続,新たな商機の発見,事業の創造・発展とつながります。中小企業は自由に活動することによって社会の多様なニーズに奉仕し,社会の発展に奉仕します。中小企業の存続理由からすれば,変動する需要に対応してこその中小企業であるということになるでしょう。「生存権」という考えについては,競争の中にあってこそ企業の存在価値が発揮されるという企業の本来的役割,存在理由と矛盾する部分があるように思われます。
 むしろ,重要なのは中小企業の競争力を強化し,大企業に対しても公正で対等な競争を実現することが大切ではないでしょうか。その企業の事業が社会の要求に応えるものであれば,必ず成功します。中小企業は自らの存在理由を確信し,事業の発展を目指します。しかし,現実には中小企業は大企業に比較して多くの不利益にさらされています。本来の競争とは異なるところで「商品」などの価格が決められていきます。競争上の有利な地位を理由して不当に廉価な価格を要求することもあるでしょう。自社のキャンペーンに小売業者の従業員を動員させるというようなこともあるかもしれません。圧倒的な宣伝力で市場を操作することもあるかもしれません。対等な競争を妨げるものを取り除き,企業が主体的,自律的に競争することができる環境を作り上げていくというのが必要なことと思われます。
 「自由に活動できれば価値ある企業は生き残り,発展する。」という企業の積極面を信じて施策がほどこされるべきです。「生存権」論は「放置すれば滅ぶ」という,企業観に立つ政策で,企業の積極面,大企業に対する競争上の優位性(現場のニーズに即座に応える。)を発揮することができないように思われます。