№1753 子会社の管理
会社が徐々に大きくなり、部門を独立させて子会社化するという組織戦略がある。持ち株会社を設けて、子会社を支配していく方式だ。会社の経営を多角化してリスク分散をはかろう場合や、有能な人材に大きな裁量権を与えてさらに企業を発展させる方式だ。
この場合、子会社をいかに管理していくかという難しい舵取りがせまられる。上場会社の場合、コーポレートガバナンス・コードというのがあって、内部統制の厳格化、透明化が図られている。これは公表される財務諸表などが適正に作られるよう担保するためだ。いくらよい数字が出されていてもごまかされていては何の意味もない。
中小企業の場合、株主に対する責任というのはそれほど大きくはないが、ホールディング形式で事業を運営しようというのであれば、内部統制システムをそれなりに整備しなければならないし、その実行性を確保しなければならない。「おまえを信頼する」という人間的な信頼関係は基礎中の基礎であるが、これもシステムによって担保されることにより長く続くことになる。
「子会社管理規程」が定められ、報告すべき事項や事前決済が必要な事項を定めておく。どの程度詳しくするかは子会社を設けた意図による。子会社はリスク管理規程やコンプライアンス体制などを組み立てていくことになるだろう。コンプライアンス方面では内部通報制度は非常に重要だ。多くの不正は内部通報から始まる。
私たちの業務の観点からすると、内部監査がどのように行われるかが重要なことになる。有能社社員に力を発揮してもらうためにはそれなりの報酬と、それなりの自由度が必要になる。そのため、子会社の社員は派遣された社長の支配下にあるため、監査する際にも抵抗があり情報収集に手間取る。
また、監査の場合資料を調査したり,作らせたりする必要があるが,その際,業務が停滞してしまうことになる。時には予告なく抜き打ち的に行わなければならない場合もある。その時に業務は停滞してしまうが,行う側、行われる側にも心理的な抵抗に遭遇する。こうした心理的な抵抗に抗してでも,行うだけの実行力や決意が必要となる。
こうした監査にともなう大きな抵抗に対抗するためにも、日常的なレベルでの監査をどのようにするか、はっきりした上下関係を意識づける、非常事態に強権的な監査行動についてのミュレーションなど、監査のルールについての整備や、思考上の訓練を行っておく必要がある。
もし、あなたの会社の子会社に不正があると疑われた場合、あなたは子会社の社長に抗して強力な監査行動にはいることができるだろうか。あなたの手足となって動く要員は確保できるだろうか。