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№1298 「倒産」直前の光景

№1298 「倒産」直前の光景
 資金繰表と預金をにらみながら毎日を過ごし、経営者はだんだんと追い詰められていく。毎月の売上は次の銀行支払に当てられ、だんだん頭が整理できなくなっていく。「次の融資を乗り切れば次があるはずだ。」その次のイメージはもちろんない。何か思い詰める感じがいつもある。心の奥がひりひりする感覚があって、時には眠れない日もある。社員は雰囲気は感じ取っているだろうが、正確には知らない。

 それが、「倒産」直前の光景だ。経営者にとってもっともつらい瞬間で、耐え抜かねばならない。どんな企業とは言わないが、ほとんどの企業がこんな経験を積んでいるのではないだろうか。こうした状況下ではやるべきことはそれほど多くない。やることは決まっている。経営者としてもいっしょうけんめいやるしかない。大切なのは心の平静をいかに保つかということだ。

 やるべきこと、それは
第一 財務の全体像を把握すること
 債務の全体像を正確に把握することだ。2年ぐらい先までの債務返済の見通しを立てる。途中、借換などが繰り返されるが、その借換の時期は金利を下げたり、期限を長期化させるチャンスだ。また、全ての無駄な経費と、効率的な営業を確保するため、経理は常に正確にする。

第二 緊急行動計画を立てる。
 当面の事業を乗り切る緊急計画を立て、行動を単純化する。短期の点検を繰り返す。成果も重要だが、緊急計画をやりきったかどうかだ。結果はあとからついてくる。心の平静を維持するためには、ある意味、心をローギアにチェンジし、心をどこかに放っておいて、それとは別の自分がローギアで確実に仕事を前進させる決意が必要だ。マラソンの苦しい時に似ている。

第三 会社の将来像の二つの道筋を用意する。
 一つはこれを乗り切ったあとの展望だ。人は夢がなければ生きていけない。自分を大切にしたいと思うなら夢を持つことだ。
 一つは万一倒産に至った事態を正確に把握し、覚悟を決めることだ。背水の陣ではないが、人は覚悟を決めた時には想像以上の力を発揮するし、精神の安定も図ることができる。

 弁護士は会社危機にあって、企業の道筋を示すだろう。それは既に社長の頭の中にある危機脱出のロードマップだ。弁護士はそれに光を当てるに過ぎない。私達は社長の思考のプロセスを整理し、他社の事例と比較して適切かどうか、法的に安全か、よりよい法的方法はあるかを提示する。