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№1028 ウェブで間違って低価格を表示した場合の責任

№1028 ウェブで間違って低価格を表示した場合の責任
 最近はウェブを利用して物を売ることも多い。
 ウェブサイトで金額を表示を間違えてしまった場合は額面通り売らなければならないのだろうか。

 新聞チラシに印刷業者がスーパー売り出し価格を間違えた場合,例えば0が抜けて,30円が3円と表示された場合などは,その差額は全て印刷業者が持つそうだ。知り合いのスーパー経営者はそんな時,バンバン売ってしまうのだそうだ。

 ウェブサイトで間違った金額を表示した場合はどうだろうか。
 間違った金額をウェブで表示して,閲覧者がメールで申込みをしただけでは売買契約は成立しない(東京地裁H.17.9.2,判時1922号105頁)。しかし,自動的に申込み確認メールを発してしまった場合は別だ。

 旅行業者がイタリア旅行ツアー料金を本来35万7000円とするべきところ8万0150円とウェブサイトに表示してしまったという事件がある。判決は8万0150円での契約成立を認め,通常料金(一般的なイタリア旅行価格)との差額26万8580円の支払いを命じた(東京地裁H23.12.1,判時2146号69頁)。

 この事件ではウェブサイト申し込み経過は次のようになる。
 ① ウェブサイトでの料金表示
 ② 顧客によるサイトからの申込み。
 ③ 旅行会社による申込み確認の自動返信メール発信。
 ④ 誤表示であることに気づき,改めて通常料金で発信
 ⑤ 顧客は8万0150円であることを前提にクレジット情報を通知
 ⑥ 旅行会社はクレジット情報の受領を拒絶
 
 ウェブサイトからの旅行申込みは,「標準旅行約款」というもので規制されている。
 それによると,ウェブからの申込み,確認メールの発信によって「予約」が成立したとされる。私たちはこの「予約」は本契約を締結する義務を定める契約としている。.本件では,返信メールがあった段階で予約は成立した。

 そして,標準旅行約款によると,顧客はクレジット情報の発信によって,予約を本契約にできるとされている。
 そこで,上記の⑤,本件では顧客がクレジットカード情報を通知した時点で旅行契約の成立を認めたのである。

 インターネットは大量の消費者を惹きつけ,利益も多いが,誤った時のリスクもある。ここのところをサイト開設者は十分注意して,販売をしなければならない。

 ちなみに,この事例は,顧客の方はずいぶんな手間をかけてる。クレジット情報を内容証明で送付し,さらに裁判までしている。それは,旅行会社の担当社の対応が非常に無礼だったというのが一番の動機だった。